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» 2017年03月24日 16時43分 公開

林信行が魅力を解説 「iPhone 7」シリーズ(PRODUCT)REDモデル発売直前レビューただ真っ赤になっただけ、でも、だからみんな欲しい(2/2 ページ)

[林信行,ITmedia]
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AIDSを持ったまま生まれてくる子どもがいない世界に

 (PRODUCT)REDの意味を知ると、これがただ見た目のインパクトだけを狙った赤ではないことが伝わってくる。(PRODUCT)REDは、iPhoneが登場する1年前の2006年に、アイルランドの音楽バンド、U2のボーカルで社会活動家のボノが始めた世界からAIDSを撲滅するためのキャンペーンだ。


 ボノ自身が故スティーブ・ジョブズやAppleのチーフ・デザイン・オフィサーのジョナサン・アイブと個人的交流があったこともあり、2006年に出したiPod nanoの(PRODUCT)REDモデルやiTunesギフトカードから始まり、2007年以降のiPod低価格モデル(iPod nanoやiPod shuffle)、iPadやiPhoneのカバー、さらにはApple Watch用のスポーツバンドや子会社のbeats by Dreのヘッドフォンやスピーカーにも展開するといった具合に積極的に関わってきた。

 しかし、Appleの主力製品であるiPhoneに関しては、(PRODUCT)REDのケースはあっても、本体はこれまで出してこなかった。そんな中、iPhone 10周年目の今年、ついに満を持して登場したのが今回のiPhone 7(PRODUCT)REDである。

 製品パッケージを開けると、中には(PRODUCT)REDの活動を紹介する赤いシートが1枚入っていて、これも他のiPhoneと違う部分だ。


 iPhone 7/7 Plusの(PRODUCT)REDモデルを買う人たちの多くは、その理由に「ただ赤が美しいから」と答えるかもしれない。それはそれで健全なことだが、実はその一方で、重要な社会活動にも参加していることになる。必ずしも意識してやった結果ではないかもしれないが、これが特定の誰かの利益になるようなことならともかく、世界からAIDSを撲滅させることに反対の人間はいないだろうし、自分だってかかる可能性がある難病の撲滅に寄与することに、むしろ価値を感じる人のほうが多いはずだ。

 (PRODUCT)REDの裏側にそんな意味もあるんだということを覚えている人は、自分の赤いiPhoneをほめてくれた人に、実はこんな意味もあるんだよ、と伝えれば世の中はきっともっと良くなると思う。あるいは他の(PRODUCT)RED製品を持っている人と、そんな話で盛り上がってみるのもいいかもしれない。


 もちろん、ちょっと小難しくて面倒な話になりそうだったら、その話はやめて「この赤いいでしょう」だけで切り抜けるのも当然、アリだ。Appleは(PRODUCT)RED裏の細かい意味などを忘れ去らせてくれるくらい、ただ赤いだけでなく、見た目も上質かつ美しく、それでいて鮮烈に仕上がっている。

「赤い」からこそ欲しくなる新iPhone 7/7 Plus

 最後に、もう1度、この赤いiPhoneがAppleの戦略上持つ意味についても考察してみたい。

 1998年、初代iMacを発表した直後の故スティーブ・ジョブズはカシオの腕時計「G-SHOCK」を引き合いに出し、昔は質実剛健だったG-SHOCKを例に、腕時計もファッション性やデザイン製の向上で7倍売れるようになった。AppleもiMacのファッション性でそれにあやかりたいと語っていた。現在、Appleの経営陣には元バーバリーのCEOや元イヴ・サンローランのCEOなどファッション業界の重役も加わっており、今後もしっかりとした技術に裏打ちされた手堅いアップデートと、ファッション性や手ごろさを売りにした柔らかなアップデートを織り交ぜた方向で進むのではないかと思う。

 そして気がつけば、この3月後半というタイミングはその柔らかなアップデートのタイミングになりつつある。振り返ってみれば2016年もAppleは、今回と同じようにiPhone SEを突然発表し、販売を開始している。

 これまでiPhoneは1年に1度だけ、秋ごろに新製品を発表し、発売するというスタイルをとってきた。これは新学期が9月から始まることの多い欧米には向いているが、4月に備えた新生活キャンペーンなどを展開する日本にとってはそれほどよいタイミングではない。iPhone更新のタイミングを半年に1回にすれば、この問題が解決できる。


 これは他の多くのメーカーがつい最近まで取ってきた“間違った”戦略で、年に2度も技術的なアップデートがあってはユーザーが混乱するばかりか、自分が買った新製品が1年も経たずに旧製品になってしまうことに不満すら感じることになる。

 しかし、機能や性能は変わらず色合いだけ変われば、秋モデルを買った人はいち早く先進技術を試せたことで満足が続けられるし、タイミングを逃して新iPhoneを買いそびれたまま半年が経ってしまい、次のiPhoneを買うべきか悩んでいた人には待たずに買う良い理由になる。もし、本当にこの通りなら、最近、Apple Watchの開発などを通して、ファッション業界の文脈での物の売り方を理解してきたAppleならではの良い戦略に思えてならない。

 しかも、機能、性能を一切変えていないのに、ここまで話題になっていることは極めて痛快だ。


 まだまだ機能の豊富さで勝負をしようとしているメーカーの経営者には、これを機にAppleはテクノロジーだけではなく、見た目や売り方までも含めたトータルなデザインで勝負しているからこそ成功しているのだということを学んでもらいし、スマートフォン市場も飽和しつつある今は、ファッション性が重要であることに気がつくきっかけになってほしいと思う(これまでファッション性の高い電気製品も量販店に置くしかなく、せっかくの見た目を台無しにしてしまうことが多かったが、最近ではおしゃれな製品をストーリーや世界観も一緒に紹介して売ってくれるお店が増え始め、一部の百貨店もそうした製品の取り扱いを始めていることにも気がついてほしい。テクノロジー製品を機能や性能や値段だけで売る時代は終わりつつあるのだ)。

 最後にもう1つ。4月にリリースされるiPhone用のビデオ編集アプリ、CLIPS。これも新風を巻き起こしてくれそうだ。自撮り映像を撮りながら何かを話せば、自動的に音声認識をして字幕を挿入してくれるところから始まり、さまざまなエフェクトをかけたり、スチル写真にも簡単に動きのある装飾をつけることができたりと、2017年後半のソーシャル上のビデオの多くが、このCLIPSで作られることになりそうな気配。インスタグラマーの間でも定番となることだろう。

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