リスキーな製品にあえて手を出すメーカーの事情とは?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2017年04月24日 14時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
work around

 「個人経営の飲食店で新しいメニューが追加されたら、それは経営が危ない証拠」とよくいわれる。客が入らない原因をメニューのマンネリ化と判断して新しいメニュー、中でも例えば麺類中心の店が丼を出すような、全くカテゴリー違いの新メニューを投入する行為は、裏返せば店の経営が危機にひんしている可能性が高いというわけだ。

 会社においても、全く新しいカテゴリーの製品を投入するのは、同様の意味を持つことがしばしばある。たとえ表面的には前向きな理由を付けていても、売り上げを急いで伸ばさなくてはいけない差し迫った状況があり、既存の製品カテゴリーだけではそれが見込めないことから、新規カテゴリーに目を向けざるを得ないというわけだ。

 しかし、ブルーオーシャンな市場がそうそうあるわけではなく、結果として選ばれるのは「リスクが高いがゆえに他社が敬遠しているカテゴリー」となりがちだ。それゆえ、特定の業界にフォーカスすると、こうしたケースで選ばれるカテゴリーは毎回同じ、ということになりやすい。

 これは裏を返せば、「このカテゴリーを扱い始めたということは、あのメーカーは売り上げが厳しいんだな」と見抜けるということを意味する。会社の成長予測に後れを取っているがために投入されることもあるので、ダイレクトに会社の危機と結び付くかというとそうでない場合もあるが、あえてリスクの高いカテゴリーを手掛けるということは、相応の理由があると思ってよい。

 今回は主にPCアクセサリーメーカーによくみられる、何らかの兆しになりうる危険な製品カテゴリーを見ていくことにしよう。

訴訟リスクを回避できる? 「プリンタの互換カートリッジ」

 最初に挙げられるのは、インクジェットプリンタの互換カートリッジだ。プリンタメーカーが販売しているインクカートリッジは利益率が高いうえに回転率も高く、プリンタビジネス最大のうまみといわれるが、それゆえ他社にまねされないよう、特許の塊といっていいほど何重にもガードされている。過去に数多くの裁判が起こされていることからも分かるように、プリンタメーカーが黙って見過ごす確率も低い。

 とはいえ、市場の規模が非常に大きく、確実にニーズが見込める互換カートリッジは、「多少のリスクを背負ってでも売り上げを伸ばしたい」というニーズにぴたりとマッチする。製造ノウハウをきちんと持っている協力会社さえ見つけることができ、また訴訟リスクを回避できるめどが立てば、非常にうまみのあるカテゴリーといえる。

 こうしたことから、互換カートリッジを取り扱うか否かは、メーカーによってはっきりとその対応が分かれており、大手サプライメーカーほど取り扱いはない(過去に訴訟があったという経緯もあるのだが)。これらを新しく取り扱うというのは、よほどの新参者を除けば、売り上げに切羽詰まっていると考えられるわけだ。

 ただ、幾度となく訴訟が繰り返されたこともあって、ここ10年ほどは特許をうまく回避した一部専業メーカーを除き、あえて新規参入しようというメーカーは実質なくなりつつある。それら専業メーカーがエコを前面に出して一定のポジションを得てしまったことで、プリンタメーカーとしても、互換カートリッジによる動作不良を訴求するしかなくなりつつあるというのが、現在の互換カートリッジの状況だ。

ニーズは確実にあり単価も高い「ノートPCの互換ACアダプター」

 次に挙げられるのは、ノートPCの互換ACアダプターだ。昨今の「Galaxy Note 7」の発火事故の原因とされるバッテリーほどではないものの、通電系の製品であるACアダプターは、火災事故の原因となりやすい製品である。

 特に厄介なのが、製品の特性上、海外で利用されるケースが少なくないことだ。国内だけであれば品質チェックは可能だが、世界中ともなると、現地の電圧事情に応じた動作確認を徹底するのは難しく、事故の危険は絶えずはらんでいる。少なくとも、通電系でないアクセサリーだけを売っているのと比べると、メーカーが負うリスクは桁違いだ。

 にもかかわらず、互換ACアダプターを手掛けるメーカーがあるのは、まず1つにノートPCの販売台数がここ十数年で増え、市場が広がっていること。また、互換ACアダプターの多くは純正品に比べてサイズが小さいことを売りにしており、モバイルPCユーザーのニーズにぴたりとマッチしているというのも大きな理由だ。価格も数千円と、一般的なアクセサリーに比べると単価も高く、販売店への初回導入だけでかなりの売り上げを見込める。

 もっとも、PCアクセサリーメーカーに、これら互換ACアダプターをオリジナルで開発・製造する技術力はもともとないうえ、仮にあったとしても自社で製造工場を立ち上げることはない。PCアクセサリーメーカーがこれらを扱うのは、先ほどの互換カートリッジと同じく、外部にノウハウを持った協力会社があり、売り込みがあった場合に限定される。つまり、それらの製品に自社の型番を付け、自社の販路を使ってそれらを流すことにより、グロスで売り上げを上げるという目的を果たすわけだ。

 ちなみに、何かともめ事になるのが、ノートPC本体の製造終了に伴う、互換ACアダプターの販売終息だ。値引をすれば処分のしようがあるアクセサリー類と異なり、ノートPCの互換ACアダプターは、どれだけ安くしようとも、本体機器の流通がなくなれば引き取り手がなくなってしまう。

 それゆえ、鳴り物入りで互換ACアダプターの取り扱いを始めたはいいが、こうした終息後の製品の取り扱いについての見解の相違で、協力会社とPCアクセサリーメーカーが仲たがいするケースもみられる。それでもPCアクセサリーメーカーが互換ACアダプターを扱うのは、事後のことはさておき、導入時の売り上げが魅力的であるからにほかならない。

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