こうしたiOS 11におけるさまざまな進化は、iPhone/iPad用アプリの開発者らを再び活気付けてくれるはずだ。しかし、そうしたアプリとユーザーの接点となるApp Storeには既に膨大な数のアプリが登録されており、目当てのアプリを発見しにくくなっているのも事実。そこでAppleはiOS 11で、この世界最大規模のアプリ市場、App Storeに大きくメスを入れる。
App Storeは現在でも勢いが止まっておらず、毎週5億人が利用しており、累積で1800億ダウンロードを達成している。これは自動ダウンロードやアップデートは含まない数字だ。App Storeを通して開発者に支払われた金額は累積で700億ドル。しかも、その30%はこの1年で支払われたという。
Appleはこの素晴らしい市場をさらに進化させるにあたって2つのことに注力していく。1つは「ユーザーが安心して使える信頼できる市場にすること」、そしてもう1つが「開発者にとって大きなチャンスを与える市場にすること」だ。
この取り組みにあわせて、オープンから9年の間それほど大きく変えてこなかったApp Storeの見た目を0からデザインし直した。特徴は以下だ。
Todayタブには、人気アプリの使いこなしや、あまり使われていない機能を紹介する「How-To」といった記事も追加される。まるでAppStore自体が、もっとも洗練された公式のアプリ紹介雑誌のようになるApp Storeを刷新する一方で、アプリの営業ルールなども見直しており、ユーザーにレビューを強制することは禁止となった。
開発者にとってApp Storeがより使いやすい場所になるように、アプリの審査のスピードアップや「Phased Release」への対応も行なっている。アプリ審査は、現在ではほとんどのアプリが24時間以内で完了。多くのアプリは1〜2時間で審査が完了するという。
一方、多くのユーザーを抱える中小規模の開発者にとって重要なのが「Phased Release」だ。こうした開発者は全ユーザーが一気にアプリをアップデートしてしまうと、サーバーに大きな負荷がかかり、サーバーダウンなどのトラブルの元になる。そこで、それを避けるべくユーザーをいくつかのグループに分けて少しずつ反応を見ながらアップデートを許可できるようになるのだ。
iOS 11は多岐に渡る改良が行われている。最も重要なのはiMessage、Apple Pay、Siri、カメラ機能、写真アルバム、新コントロールパネル、マップ、CarPlay、HomeKit、AirPlay 2、MusicKit、AppStoreの刷新、METAL 2、HEVC(動画と静止画の新フォーマット)、MLKit(機械学習)、ARkit、そして前回の記事で紹介したiPad関連の操作の刷新だ10周年という大きな節目を迎えたiOS。この10年は人類史上、最も勢いよく売れた電子製品のOSとして、ソーシャルメディアブームを加速し、携帯型ゲーム機市場を脅かし、コンパクトデジタルカメラを葬り、多くのアプリ長者を生み出したAppエコノミーで話題をさらってきた。
その勢いあるプラットフォームも、10年目の後半ではやや盛り上がりが鈍化していた印象はあったが、AppleはこのiOS 11でARやAIなど次の5年、10年の盛り上がりを作るのに十分な基盤を用意し、その一方でアプリ流通の市場も再整備して臨んでいる。再びあのエキサイティングな日々を再現できるのか。成功に必要なピースの半分は今、アプリ開発者たちの手に委ねられた。
(取材協力:Apple Japan)
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