「Flashの終わり」にWindowsはどう対応していくのか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

» 2017年08月03日 17時00分 公開

現状でFlashはどれくらい利用されているのか

 Googleが7月25日に「Saying goodbye to Flash in Chrome」のタイトルで公開したブログの記事では、「3年前にデスクトップ版Chromeユーザーの80%が毎日Flashでサイト訪問していたが、今日ではわずか17%の水準まで落ち込んでいる」と報告している。

 筆者がたまに猫動画の閲覧に使っているニコニコ動画でも、ここ最近はデフォルトの実行環境がHTML5に移行しており、もはやWeb巡回であえてFlashを利用するケースはなく、意図せずして実行される広告表示に限られているのが現状だ。

 Flashの現状について、もう少しデータを見ていこう。W3Techの最新データによれば、2017年7月29日時点でのWeb全体におけるFlash利用サイトは6.3%で、1年半前に紹介した8.8%という数字から3割弱ほど減少している。

 ここ1年は若干減少ペースが緩くなっているものの、年率およそ2%前後で減少が続いており、このままいけば2020年の時点で1%のシェアを切っている可能性が高い。恐らく、アクティブなサイトほどFlashの切り捨てが早く、最後までFlashが残るサイトはどちらかといえば放置されているケースが多いと予想される。多くのユーザーの目には、2020年のEOLを待たずして「Flashが消えた」と映るかもしれない。

W3Tech Webサイトにおけるコンテンツ記述技術のシェア推移(出典:W3Tech)

 この傾向に拍車を掛けるのは、ユーザーのWeb利用動向だ。comScoreとMorgan Stanleyが2011年に発表した予想(下のグラフ)に、「世界のインターネットユーザーにおけるデスクトップ利用とモバイル利用の数が2014年に逆転する」というものがあった。

 実際、comScoreは2015年に米国で「モバイルのみ利用」「デスクトップのみ利用」というユーザーのシェアが逆転していることを報告しており、今日のWeb利用のマジョリティーがモバイルに移っていることを示している。

 モバイルの世界は前述のようにFlashコンテンツがない世界であり、ユーザーはWebブラウザの「素の技術」またはモバイルアプリ経由でインターネットにアクセスしている。つまりここ数年の傾向として、大多数のユーザーが既に「Flashコンテンツを見ているか」を意識していない可能性が高く、当初「リッチなWebコンテンツを見るための手段」として普及したFlashの役割は既に終わっていると考えたほうが正しい。

 先ほど「ChromeでFlashを利用するデスクトップユーザーが17%」という話を聞いて、筆者は「思ったより数字が大きい」と感じたが、あくまで「デスクトップ利用」というのが前提というわけだ。

State of the Internet Morgan Stanleyによる世界のインターネット利用の推移予測。2011年のデータだが、実際にほぼ予測通りの動きを見せている(出典:comScore「State of the Internet」)

HTML5移行における最後の障壁

 Webブラウザを提供する各社は、Flashを含むプラグイン排除に向けた動きを数年前から加速させており、現時点でIEを除く主要ブラウザの全てでFlashコンテンツの実行が「Click-to-Run」形式となっている。

 FlashからHTML5への移行において、最後の障害となるのは「動画」「ゲーム」「広告」の主に3つと言われる。動画については実装側の技術対応や状況の改善により問題がカバーされつつあり、広告については大手広告プラットフォームのGoogleが積極的な排除策を講じたことにより、主要な広告ネットワークからは自然消滅していくと考えられる。

 また、長らくPCのブラウザゲームの主軸となっていたFlashだが、こちらも徐々に置き換えが進んでいる状況だ。MozillaがFlashサポートの終了宣言に呼応する形で出したブログの記事でも触れているが、ここ1年ほどでこれらゲームの過半数がHTML5ベースに移行しつつある。

 ブラウザゲームを提供しているKongregateは、自身のプラットフォームにアップロードされるゲームが利用する技術の推移を公表しているが、過半数が既にFlashやプラグイン技術を使わないHTML5ベースとなっているようだ。その傾向は人気ゲームほど顕著で、6割の水準を超えている。Flashの「Click-to-Run」がデフォルトとなりつつある現在、この傾向はさらに加速するだろう。

Kongregate 1カ月間にアップロートされるゲームが利用している技術の推移(出典:Kongregate)
Kongregate レーティングが4.0以上で1万回以上プレイされている全てのゲームが利用する技術のシェア(出典:Kongregate)

 PCブラウザゲームの主要なプラットフォームとして機能していたFacebookもまた、同社のプラットフォームを利用してゲームを開発するデベロッパーらにHTML5など代替技術への素早い移行を推奨している。

 Facebookが最初のターゲットとしているのは2018年半ばで、これは最大シェアを誇るブラウザであるGoogleのChromeがより踏み込んだ「Click-to-Run」を導入するタイミングだという。Chromiumの説明によれば、これは「Non-Persisted HTML5 by Default」と呼ばれる「Chrome 66」以降がリリースされる2018年7月のタイミングで、ユーザーがブラウザを再起動する度にFlashの実行許可を確認するようになるという。

 さらに、これはMicrosoftがIE11とEdgeでセッションごとにFlashの実行許可を強制するタイミングと一致しており、デスクトップ向けブラウザのシェアの大部分を握る両社が一致団結することで、この動きをさらに推し進めるのが狙いと考えられる。

 ちなみに、日本ではFlashを活用したブラウザゲームとして「艦隊これくしょん-艦これ-」や「刀剣乱舞-ONLINE-」といった人気タイトルがあるが、運営元のDMM.comによれば「対応を協議中」という。

 ゲームもさることながら、FlashをWebアクセス解析に利用していたケースも多いようだ。Googleが2016年8月に公開したブログの記事によれば、この時点でWeb上のFlashコンテンツがWebサイト解析のためにバックグラウンドでダウンロード・実行されるケースが多く、実に90%近くでこうしたテクニックが用いられていたという。

 既に同年9月以降はChrome 53においてデフォルトで無効化されるようになっており、さらに12月のChrome 55ではHTML5に対応しているサイトでの同技術の優先利用が仕様化されている。いずれにせよ、「穴」と呼べるような部分は段階的にほぼふさがれつつあり、最後の砦(とりで)が主要ブラウザで、「Click-to-Run」が厳密運用される2018年半ばということになる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  5. QualcommがPC向けSoC「Snapdragon X Plus」を発表 CPUコアを削減しつつも圧倒的なAI処理性能は維持 搭載PCは2024年中盤に登場予定 (2024年04月25日)
  6. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  7. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  8. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  9. AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目! (2024年04月25日)
  10. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー