iPhone 8は本当に保守的すぎるのか Apple Watch Series 3と使って得た結論:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/5 ページ)

» 2017年09月27日 14時30分 公開
[本田雅一,ITmedia]

(アプリ以外)完全な垂直統合による利用者体験の管理

 例えば、iPhone 8シリーズのカメラには「HDR」という設定項目がなくなった。もちろん、HDR撮影が行えないわけではない。設定する必要がなくなったのだ。iPhone 7シリーズ以前のiPhoneでは、iOS 11でもHDRの項目が残っている。これは新機種だけを優遇しているのではなく、適切なシーン判別を瞬間的に行い、部分ごとに適切なコントラストで絵全体を仕上げる処理をiPhone 8のISPとGPUで実現してるからだ。

 実際、太陽をバックに逆光の建物を撮影するといった、かなり極端にコントラスト差が大きなシーンでも、空の雰囲気、建物のディテールともに残しながら、全体の絵のバランスが取られる。

 こうした映像は「絵作り調整」の範囲では行えない。シーンを判別したうえで、個々に適した処理を部分ごと、シーンごとに行う必要がある。そしてシーンを判別する映像処理能力を独自プロセッサを盛り込むことで実現している。

iphone 8 iPhone 8シリーズのカメラには「HDR」という設定項目がないが、HDR撮影が行えないわけではない

 HDRの例はかなり極端なのだが、上記のように映像を分析する能力によってiPhone 8シリーズのカメラ画質が向上してるように思える。思える……という言葉はあまり使いたくないが、単純な画質調整では難しい映像処理が行われている一方、その背景にある技術についてAppleはほとんど話さない。

 iPhone 8シリーズとiPhone 7シリーズのカメラ画質の差は、よりS/N比のよいイメージセンサーを用い、A/D変換時の精度(色深度)も深くなり、カラーフィルターの色度も変えたことが影響している(2倍の速度で読み出せるようにしたことでローリングシャッターゆがみも抑えられている)。またイメージセンサーのノイズ処理もA11 Bionicに内蔵された新しいISPに依存しているようだ。

 が、それだけでは説明できない……例えば名所における細かな明暗トーンやオートホワイトバランスの違いが見られる。

 A11 Bionicに組み込まれているプロセッサとiOS 11、それにiPhone 8シリーズに採用された新センサーの組み合わせで、レタッチしなくとも納得感のある絵を出すのは、イメージ処理のパイプラインを改善しただけでなく、(HDRと同じく)そもそも映像処理の前段階として、iPhoneのカメラが数世代前から導入していると言われる機械学習による賢い画質補正の能力が大幅に向上したからではないだろうか。

 背景を明るく写しながらも、被写体をLEDフラッシュで明るく写すスローシンクロ機能に対応しているが、こちらもLEDフラッシュの「AUTO、オン、オフ」という選択肢はあるものの、どのような状況でスローシンクロとなるかは、iPhone 8シリーズが自動判別してくれる。

 ただし、AUTOに設定しておくことで、かなり賢く光ってくれる印象だが、必ずしもベストとは言えない。被写体や被写体との距離などの情報から適切に判断できるようになれば、そのうちAUTO以外に設定する必要がなくなり、設定項目も消えていくかもしれない。

 「カメラ」という製品ジャンルの常識からすれば、あり得ない話ではあるが、スマートフォンという商品軸で考えれば十分に考えられるだろう。もし利用者自身が「使いこなし」を望むならば、マニュアル機能を重視したアプリを使えばいい。

iphone 8 iPhone 8はシングル、iPhone 8 Plusはデュアルカメラを採用。見た目が大きく変わったわけではないが、センサーやカラーフィルターの変更、そして画像処理技術により、カメラ画質はさらに向上した

 「iPad Pro」で導入された「True Tone」(周囲の状況に合わせてディスプレイのホワイトバランスを最適化する機能)も、オン/オフの選択肢をユーザーに与えてはいるが、基本的には「おまかせ」で適した色合いを表示するために搭載されている。

 鮮やかさばかりを求め、正しい色再現について考えていない製品が多い中、数年かけて広色域を正しく扱うために「Display-P3」のカラープロファイルをAppleの各種製品に浸透させ、パネルの色調整を行ったうえで製品を出荷。さらに4つの環境光を用いて色温度まで調整している。

iphone 8 「iPad Pro」で導入された「True Tone」もサポート。環境光に合わせてディスプレイのホワイトバランスを自動調整する

 iOS、端末、デバイス(プロセッサ)について、全て1社で管理しているからできるとも言えるが、異なるジャンルの技術を統合することは、たとえ1社でもなかなか難しい。それぞれ開発から製品化までのリードタイムが違うからだ。しかし、最終的に垂直統合による利点が随所に見られる。

 機能そのものよりも、垂直統合ならではの、カタログスペック以上に納得感ある利用者体験の磨き込みこそが、iPhone 8シリーズの完成度の高さ表している。

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