ITプロフェッショナルや開発者らを対象にしたMicrosoftの年次カンファレンス「Microsoft Ignite 2017」が9月25日〜29日に米フロリダ州オーランドで開催された。
かつてのTechEdなど各種イベントを1つに集約して2015年からIgniteの名称で開催してきたイベントだが、2017年もMicrosoft Officeをはじめとする同社のビジネス向け最新製品を発表した。幾つかをピックアップして紹介する。
話題の1つ目はOfficeだ。Office Perpetualの次期版にあたる「Office 2019」が2018年後半にもリリースされる。プレビュー版の提供は2018年半ばに開始するという。
Office 2019には、Word、Excel、PowerPoint、Outlookといったおなじみのオフィスアプリケーションと、Exchange、SharePoint、Skype for Businessなどのサーバアプリケーションおよびサービスが含まれる。
Office Perpetualとはパッケージやバンドル販売などの形態で提供される製品のことで、特定のデバイスに対してライセンスが「Perpetual(永続的)」に付与される点に由来する。ライセンス利用のために1年単位など一定期間ごとに更新が必要となる「Office 365」とは対の存在だ。
ただMicrosoftとしては、製品をOffice 365などのクラウドへとシフトしている段階にある。特に中小企業を主なターゲットとしたWindows OSを含む管理スイート「Microsoft 365」のリリースにみられるように、ユーザーには極力クラウド利用を推奨している。
これは最近になり改訂された製品サポートポリシーにも現れており、Office 365系サービスの利用には「サポート期間内にある製品のライセンスが必要」という条件を付与するなど、実質的なクラウド誘導策を敷いている。
Office Perpetualは永続的なライセンスが与えられている一方で、ソフトウェア製品である以上はサポート期間が設定されており、リリースから一定期間が経過するとメインストリームサポートが終了する。
Office 365で提供されるサービスにはOutlook、OneDrive for Business、Skype for Businessなどが含まれるため、サポートが終了すると、主にコミュニケーション系ツールでの利用に制限が加わる。例えば、Office 2016は2020年10月13日にメインストリームサポートが終了するため、これら機能を利用するユーザーはOffice 2019へと乗り換えるか、あるいはOffice 365のサブスクリプションを契約するしかない。
つまり、現状におけるOffice Perpetualは「クラウド移行の準備が整っていない」というユーザーのための中間ソリューションのようなものであり、「次のタイミングではクラウドを検討してほしい」というMicrosoftのメッセージが隠されているのではないかと筆者はみている。
Office 2019の詳細はまだ不明だが、幾つかの新機能が説明されている。例えばWindows 10の「Anniversary Update(1607)」以降に加えられた「Windows Ink」との親和性がさらに高まり、筆圧検知や傾き効果、筆跡再現といった機能をサポートする。また、Excelでの新しい数式やグラフを使ったデータ解析、PowerPointでの変形やズームといった新しいアニメーション効果が加わる。
特に安定性や継続性が重視される業務用途では、新機能があっても使わないというケースは少なくないが、Windows InkのようにWindows 10の新機能との連携強化もみられ、それなりに利便性を感じるアップデートになると予想する。
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