ワコムは4月24日、メディア向けに開いたラウンドテーブルでクリエイターのデザイン作業をVRやMRを使って効率化するシステムの構想と試作機を発表した。クリエイターは仮想的な作業空間に入り込み、3Dモデルの物理的な大きさ(縮尺は変更可)やデザインの整合性を確認しながら作業を進められる。またペンタブレットなどでデザインした2Dのスケッチを取り込むことも容易だという。
ワコムの玉野浩氏(クリエイティブ・ビジネス・ユニット プロダクティブライフサイクルマネージメント シニア・バイス・プレジデント)は、「2016年はVR元年と呼ばれ、2017年にはさまざまな産業がBtoBでVRを使っていった。しかし、産業の中で唯一VRに対応していないのが、クリエイター産業。クリエイター向けのVRツールがないので、ここにチャレンジしようと思った」と話す。
試作機は、英国のスタートアップgravity sketchが開発したVR対応の3Dデザインツール「Gravity Sketch」を使用。ヘッドマウントディスプレイ「HTC Vive」と、ワコムのデジタルペンを取り付けたコントローラー(試作機)、Valveのトラッキングシステム「Lighthouse」を組み合わせ、クルマの3Dモデルを作成する様子を披露した。コントローラーは長時間の作業が行えるようViveのコントローラーより軽くしたという。
デモの実演を担当したのはgravity sketchの共同創業者であるOluwaseyi Sosanya氏。VR空間ではコントローラーに取り付けたペンの先からインクが出てくるようになっており、彼が動かした通りにクルマのデザインが出来上がっていった。
もちろんクルマのような大きなものだけでなく、カメラや眼鏡のような小さな製品のデザインも可能。完成したデータはペンタブレットやPCなどでも編集ができるほか、さまざまな形式で出力したり、3Dプリンターで印刷したりできるようにする予定という。
ワコムは同日開催していたシンポジウム「Wacom Creator's Symposium」にも試作機を展示し、来場したクリエイターから使用した感想などのフィードバックを得たという。「クリエイターの作業によってさまざまなワークフローがある。それに沿った形でソフトを作り込んでいきたい」(玉野氏)
製品化にあたってはクリエイターの作業に適切かどうかはもちろん、トラッキングの精度をどう担保するか、CADや3Dソフトの連携の強化、ワコム商品との連携などの課題も解決していくとした。ヘッドマウントディスプレイやMRグラスについても市販されているものには対応していく方針だ。
ワコムの井出信孝社長は「現実と仮想現実をいったりきたりしながらシームレスに作業する製品とソリューションを用意し、クリエイターに訴求していきたい」と話した。
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