新OSに見るAppleのメッセージとは? WWDC 2018を林信行が読み解く(2/4 ページ)

» 2018年06月07日 11時11分 公開
[林信行ITmedia]

iPhoneの利用時間を減らすための改善

 WWDC 2018で見た「顧客中心」の姿勢はこれだけではない。次に驚かされたのが、これまたiOS 12に搭載された「Notification」(通知)機能や「Do Not Disturb」(おやすみモード)機能、そして新たに加わった「Screen Time」だ。いずれもiPhoneの使い過ぎや、iPhoneによってリアルな世界での生活が侵害されることから「顧客」を守るための機能である。

普段は便利でも、取り込み中に受けると煩わしい通知機能。主張の強いアプリの通知が、通知センターの画面を埋め尽くさないように、通知の表示はアプリ単位でグループ化表示されるようになった

 iPhoneの登場以後、多くのIT企業は、1日24時間のうちユーザーとの接触時間をいかに増やすかを重視してきたが、その一方で“歩きスマホ”やソーシャルメディア中毒、ゲーム中毒、ITデバイスの使いすぎによる不眠や肩こり、視力の低下などが社会問題になっている点も見過ごせない。

 中毒性が高くなりがちなスマートフォンの機能をリデザインして、リアルな生活の充実を取り戻すことが上で挙げた3つの機能に共通する特徴だ。つまり、ある意味ではいずれもスマートフォンの利用時間を減らすための機能であり、これも広告などで収益を上げるために、接触時間の増加を目指してきた他のIT企業からはなかなか出てこない提案といえる。

 メッセージの受信や速報ニュース、アプリのアップデートなど、iPhoneの画面に常に表示される通知。グループチャットで話が盛り上がると、自分は仕事中であるにもかかわらずポロンポロンと通知が鳴り続けて仕事に集中できないという経験をしたことがある人は多いだろう。

 ユーザーの関心を引こうと頻繁に通知を送ってきては、顧客の生活を乱す迷惑なアプリも少なくない。気が付くと通知センターの画面が通知だらけになっていた、ということもある。iOS 12では同じアプリからの通知を全てひとまとめにして表示する通知のグループ化が可能な他、表示された通知から直接(設定アプリを使わずに)、そのアプリの通知を消音にしたり、オフにしたりできる。

取り込み中にやたらと通知のうるさいアプリがあった場合は、一瞬だけiPhoneを取り出して「Deliver Quietly」(静かに通知)機能を選べば、音や振動に煩わされなくなる。「設定」アプリを介さず、通知表示から直接、そのアプリの通知を切ることもできる

 “マナーの悪いアプリ”の通知を簡単にオフにできるようになったことは、アプリ開発者に節度を守った効果的な通知をするように促す側面もあるように思う(オフにされるよりは、通知が待ち遠しくなるくらいが良い頻度だと思う)。

 「Do Not Disturb」(おやすみモード)機能の紹介でも、「あるある」のシチュエーションが紹介された。深夜、誰かから緊急メッセージの通知が入り、音が鳴り、暗かった寝室にiPhoneの画面が光って目が覚める。画面を見ると、つい気になってしまうメッセージ。ついつい起きて返信したら、そのままソーシャルメディアのやりとりが続いてしまって寝付けなくなる――メッセージを送っている側も「返事は今夜でなくてもいい」と思っているのに、送り忘れないように送った結果の悲劇である(もしかしたら、送った側も寝られなくなって後悔しているかもしれない)。

 iOS 12ではそんな悲劇が起きないように、寝ている時間はそもそも通知画面にメッセージの要件をすぐには表示しない設計になっている。小さな工夫だが「顧客」の生活に大きな変化をもたらす。

 この「Do Not Disturb」では、就寝時間だけでなく、日中でも「1時間だけ」「夜まで」「今いる場所から移動するまで」「(カレンダーに入っている)現在のイベントが終わるまで)」といった形で有効にできる。

睡眠中や取り込み中の通知を表示しなくなる「Do Not Disturb」機能(おやすみ)機能。オンにしている間は、画面に通知の概要を表示しない設計に変わった。画面には「ベッドタイムの邪魔をしないでください」の後に「電話の着信や通知は通知音や表示がオフになっています。受信した通知は全て履歴に記録されます」と書かれている
通知再開を忘れてしまうのが人間。Do Not Disturbではあらかじめ「1時間だけオフ」「夜までオフ」「今いる場所から移動するまでオフ」「(カレンダーに書かれている現在参加中の)イベントが終わるまでオフ」といったオプションを選べる

 これらの機能で、煩わしい通知から解放されるだけでも、健全さを取り戻せる人は多いだろう。しかし、仮に通知がなくても、ついついソーシャルメディアやゲームをやり過ぎてしまう人もいる。中には自分では「やり過ぎ」の自覚がない人もいるかもしれない。

 新機能の「Screen Time」は、iPhoneやiPadの活用履歴を分析して、どんなアプリをどれくらい使っているか、個々のアプリがどれくらい多くのメッセージを送ってきているかなどを客観視させてくれる。それによってiPhoneの使い方を改めたり、通知が多すぎるアプリの通知を切ったりすることで「顧客」に健全な生活を取り戻させてくれる。

 意志が弱い人は、あらかじめ「1日のソーシャルメディアの利用は◯時間」のように設定しておくと、それ以上使えなくする機能もあり、これを親が子どものiPhoneに対して設定することもできる(ということは、子どもは「親に設定された」と言い訳して、友人からの面倒なからのメッセージをしばらく未読のまま放置し、もっと大事なことに時間を費やせる)。

どのアプリにどれだけ時間を費やしているかを統計データで教えてくれる「ScreenTime」。どのアプリが一番通知が多いかを教えて、通知削減に役立てたり、使い過ぎのアプリに時間制限を設けたりすることもできる

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