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» 2018年09月01日 11時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:受注しなければよかった? 大口案件で消えていくPCアクセサリー (1/2)

季節ごとの売上数の変動があまりないPCアクセサリー業界にとって、法人などの大口案件は魅力的だが、それらはときとして製品の終息を早めることにもつながる。一体どのような事情によるものだろうか。

[牧ノブユキ,ITmedia]
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 季節ごとに売れ筋製品ががらりと変わる衣料品や食品などと異なり、PCアクセサリー業界は年間を通して売り上げの変動もあまりなく、ある意味で生産量が読みやすい。

 季節要因がない代わりに、PC本体の発売時に爆発的に売れたり、またPC本体の終息に伴って一気に需要がなくなったりと、発注担当者は別の苦労はあるわけだが、それさえ除外すれば、せいぜいボーナスシーズンや新入学シーズンに一時的に回転がよくなる程度で、年間を通して発注数はそれほど変化がない。

 こうしたことから、発注担当者のポカや、製造委託先で何らかのミスが起こるようなケースを除けば、長期的に品切れになることはほとんどないのが現状だ。新製品ならまだしも、いったん世に出て評価が定着した製品であれば、販売数も予測しやすいので、なおさらである。

 とはいえ実際には、消費者から見えないところで、特定の製品が長期間にわたって欠品することは少なからずある。多くの場合、そこには大口案件の影がちらついているわけだが、それらは製品の終息を早めることもしばしばだ。具体的にどのような事情によるものなのかを見ていこう。

別製品への振り替えが難しいセット販売案件

 一つはセット販売の案件だ。具体的には、「ある大学の新入生にPCとセット販売するので、キャリングケースを数百個よこせ」といったパターンである。こうしたセット販売の案件は、PCアクセサリー業界では文教用途に限らず、よく発生する。

 数百個という数量はたいしたボリュームに見えないかもしれないが、汎用(はんよう)性の高い製品であればいざ知らず、特定のPCにのみ対応することをアピールしている製品は、細かくラインアップが分けられていることもあって、月に何百個、何千個という数が動くことは、大手のメーカーであってもあまりない。

 特に厄介なのは、今回の例で挙げた、学生向けの案件だ。こうした案件を取り仕切ることが多い大学生協は、大抵は1人の担当者が製品の選定を行っている。こうした場合、少なからず独自性を出したいのか、メーカーにとってはあまりメインストリームではなく、生産数も決して多くない、マニアックな製品を指定してくることがある。

 一般的に、法人向けの大口需要が見込まれる製品は、メーカーも倉庫に在庫を多めに持っておき、いざというときに対応できるようにしておくものだが、このようにマニアックな製品のオーダーがまとまってきた場合は、もともと在庫が少ないだけに、対処のしようがない。実質、お手上げとなってしまう。

 かといって案件自体を断ってしまうと、何カ月分にもおよぶ売り上げを失うだけでなく、次の年からこうした大口の案件が別メーカーに行ってしまうのは目に見えているし、別の製品に振り替えるにしても、適した代替製品が存在するとは限らない。

 ついでに言うならば、大学生協の担当者は自分のチョイスにこだわりをもつ人が多く、製品の振り替えが難しい場合もある。そのため多くのケースでは指定の製品を何とかそろえるべく、発注担当者は東奔西走することになる。

ノベルティは数量こそ桁違いだが実は地雷?

 もう一つ、セット販売に近いケースとして挙げられるのが、ノベルティグッズ需要だ。

 展示会や発表会、あるいは会社説明会などでロゴを入れて配布されるノベルティは、ある日突然、1000個や2000個、下手をすると1万個といった途方もない単位で、見積依頼がやって来る。それもこれまで取引がない法人から、Webサイトの法人窓口に突発的に連絡が来ることも珍しくない。

 ノベルティは対応しやすい製品とそうでない製品があるため、メーカーもなるべく対応が容易な製品が指定されるよう、カタログやWebサイトでそれとなくアピールしておくものなのだが、ノベルティは目新しさがあってナンボということもあり、普段あまり売れていない製品をあえてチョイスしてくるケースが後を絶たない。

 つまりメーカーからすると、普通に店頭に並べていても1店舗当たり月に1個売れるかどうかという製品が、いきなり何千個も必要となるわけで、どうしても通常の生産に影響を及ぼすことになる。

 特にノベルティならではの難しさが、見積の依頼が来たとして、その確度が全く読めないことだ。ノベルティは基本的に無料配布であることから、他社に比べて高いか安いかはあまり考慮されず、指定の数がそろえられるというだけの理由で、あっさりと本発注に至ってしまうことがある。

 もちろんその逆に、これは成約確実と思われていた案件がポシャることも数多いので、見積の段階でうっかり本発注を行ってしまうと、今度は過剰在庫とキャッシュフローに悩まされることになる。実はメーカー泣かせだったりするのだ。

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