受注しなければよかった? 大口案件で消えていくPCアクセサリー牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2018年09月01日 11時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
前のページへ 1|2       

大口案件への対応が製品の終息につながることも

 PCアクセサリーのほとんどは海外で生産されており、発注から入荷までは2〜3カ月かかるのが普通だ。今回見てきたように、セット販売やノベルティといった大口案件が発生したからといって、まるまる1回分のロットに相当する数量を、いきなり2週間後に倉庫に納入しろというのは、現実的には不可能だ。

 ではどうするかというと、通常在庫の補充として現在発注中のロットをそれら大口案件に回し、空白になった通常在庫分を追って手配する、という形になる。これにより、大口案件には何とか対応できたものの、店頭で売り切れた通常在庫はいつまでたっても補充されない、という事態が起こるわけである。

 もっとも、大抵の場合において、こうした大口案件による欠品は店頭で目立つこともなく、ユーザーも気付かないのが普通だ。恐らく読者諸氏も、特定のサプライやアクセサリーが長期欠品していて困った事例に遭遇したことは、あまりないのではないだろうか。

 その理由は、今回紹介したように、大口案件で欠品しがちなのはマニアックなアイテムが中心であり、メジャーなアイテムは欠品にまで至らないことが一つ。

 もう一つは、長期的な欠品が発生した場合、店頭の棚が空白になったことが分からないよう自社の別アイテムと入れ替えることで、それっきり店頭から姿を消してしまうことが多いからだ。欠品しているのに手をこまねいていた結果、事情を知った他社が別アイテムをねじ込み、売り場を奪取するケースもある。

 そうして消えていった製品は結果的に廃番へと至るケースもあり、製品寿命という観点で見ると大口案件を受注しない方がよかった、ということも少なくないわけだが、そこまでマクロな視点で判断を下すのは、毎月の売上確保に追われている営業マンや購買担当者にはまず不可能だ。

 PCのアクセサリー・サプライメーカーは、数年のうちに、全ラインアップの半数近くが新製品に入れ替わっていることもしばしばだ。それらの多くは、新しく出てきた製品に押し出されて古い製品が売れなくなることによるものだが、中には、今回紹介したような大口案件が引き金となって、終息に至る例もある。

 つまり売れすぎて供給が不安定になることで、製品としての寿命を絶たれるわけで、こうしたケースがあることを、知っておくのも面白いだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  5. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  10. ゼロからの画像生成も可能に――アドビが生成AI機能を強化した「Photoshop」のβ版を公開 (2024年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー