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» 2018年09月20日 12時30分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:「トータルソリューション」を名乗る“寄せ集め”にご用心 (1/2)

PC周辺機器メーカーやアクセサリーメーカーが大量の製品をシリーズで投入してくる際に使われることがある「トータルソリューション」なるワード。実はこの言葉、ユーザーにとっては疑って掛かった方がいい。

[牧ノブユキ,ITmedia]
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 PC周辺機器メーカー、あるいはアクセサリーメーカーがある日突然、大量の製品ラインアップをシリーズとして投入してくることがある。

 これまで参入していないジャンルに一気に製品を投入したり、女性や学生など特定のターゲット層に向けたものだったりとさまざまだが、新しいブランドを立ち上げ、専用のカタログなども用意するなど、気合を感じられることもしばしばだ。

 そして、それらのニュースリリースなどで使われるうたい文句の一つに「トータルソリューション」がある。ビジネス向けのITソリューションなどでも使われる言葉だが、ここでのトータルソリューションは主に個人向けの製品・サービス群であり、出自もターゲットユーザーも異なる「同じ言葉だが中身は全く違うもの」である点は注意していただきたい。

 そして、この言葉が使われていた場合、ユーザーはまず疑って掛かった方がいい。それは一体なぜか、メーカーの裏事情から見ていこう。

「トータルソリューション」は社内向けのマジックワード

 本稿でいうところのトータルソリューションは、PC周辺機器メーカー、あるいはアクセサリーメーカーが専用のブランドを新しく立ち上げ、関連製品やサービスを一挙に投入する際に使われる。「複数の製品やサービスにより、快適なライフスタイルを提供する」──という触れ込みだ。この業界のニュースリリースをチェックしていると、年に数回はこのワードに遭遇する。

 もっとも、この言葉は消費者に向けられたようでありながら、実際には全くそうでないことがほとんどだ。そもそもこの言葉は、先行する競合製品に単品では全く歯が立たないか、何らかの弱みがある製品をひっくるめて、社内で製品企画を通す際に使われるマジックワードだからだ。

 メーカーの企画担当者は、市場に出しさえすれば売れる確信がある製品を、あの手この手を使って企画会議で押し通そうとする。とはいえ、単品ではそれほどの訴求力はなく、また販売数量の裏付けに乏しいと、そのまま企画を提出しただけでは没になってしまう可能性が濃厚だ。

 こうしたときに、同じく単品では魅力に欠ける他のアイテムと同時に発売し、ラインアップの豊富さを前面に出すことで、強行突破を図ろうというわけである。この際に使われる表現がトータルソリューションというわけである。

 製品のことはよく知らないが決定権を持つお偉いさん方は、トータルソリューションという横文字の響きの良さと、グロスでの予想売上額の多さにまんまとだまされ、「承認」のハンコをついてしまうという寸法である。こう書くとチョロい作戦だが、これが意外と有効だったりするから世の中分からない。

 もっとも、企画会議をパスできたからといって、そのようなイマイチな製品の集合体に新たな魅力が生まれることはないので、ニュースリリースなどには社内の企画会議を通すために使われたトータルソリューションというワードが、そのまま製品の特徴として使われることになる。これがニュースリリースに散見されるトータルソリューションの正体である可能性は否めない。

あえて独特のボディーカラーを採用する理由

 このトータルソリューションが厄介なのは、本来売りたい製品をシリーズとして市場投入するために、さして企画担当者が愛着があるわけでもなく、単品ではまず製品化の検討すらされないようなアイテムまで、シリーズに加えられてしまうことにある。

 つまり、単にシリーズを構成するためだけに、完成品をOEMなどで買い付けて、ラインアップに加えるわけだ。企画担当者自身も隅々まで仕様を理解しておらず、動作検証も最低限しかされていないため、ユーザーが購入後に何らかの不具合が起こってもサポート窓口でたらい回しにされ、うやむやにされることもある。うっかり買ってしまったユーザーは悲惨という他はない。

 また、このトータルソリューションは、「このシリーズの中で全てのお悩みが解決します」というポジティブなニュアンスがある一方で、「他の製品との組み合わせについては推奨しかねます」という、暗黙の了解が含まれていることがほとんどだ。明言こそしないにせよ、「シリーズで出しているんだから、シリーズ同士で組み合わせろ」というわけである。

 もちろん規格としては、他社製品と組み合わせても問題なく動作することもあるが、ここで使われるのが、シリーズ共通で独特なボディーカラーを採用することだ。他社製品と同じ場所に置くと見た目の統一感がなくなるように仕組む、ユーザーにとっては嫌がらせに近いテクニックである。

 単品で見ると他社製品の方が性能が上のように見えるが、他社製品を加えると色が違ってしまうので、仕方ないが同じブランドでそろえよう──そうユーザーに思わせるわけだ。さらに言うと、色を変えることで、前述のようなOEM製品の出典を分からなくするという効果もある。

 そのせいか、こうしたトータルソリューションをうたうシリーズは、他にはない独特なボディーカラーを採用していたりする。

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