「トータルソリューション」を名乗る“寄せ集め”にご用心牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2018年09月20日 12時30分 公開
[牧ノブユキITmedia]
前のページへ 1|2       

信じて買った人の行く末

 こうして市場投入されるトータルソリューションだが、シリーズごと数年以上にもわたるロングセラーとなることは、実際にはほとんどない。

 大抵は、発売から半年または1年後などキリがいいタイミングでラインアップが見直され、売れない製品が廃番となる。これは製品の企画担当者ではなく、在庫を管理する購買部門が主導で行われることが多い。いかにシリーズとはいえ、売れない製品の在庫をこれ以上抱えさせられるのはたまったものではない、というわけだ。

 そしてシリーズの中で売れない製品が姿を消した結果、販売実績が良好だった製品だけが、単品で売られるようになる。つまり企画担当者が本当に売りたかった製品だけが市場に残るという、望んでいた形になるわけだ。ごくまれに、売るつもりがなかった製品だけが生き残ってしまうこともあるが、そのときは知らぬ存ぜぬを決め込んでおけばよい。

 悲惨なのは信じて買ってしまったユーザーだ。半年もしくは1年たってから、同じシリーズの機器をあらためて買い足そうとしたところ、ラインアップがもはやもぬけの殻になっていたりする。特に困りものなのがラインアップの中に専用の消耗品が含まれていた場合で、機器の買い替えを余儀なくされたりする。

ユーザーは「回れ右」するのが得策か

 そんなこんなで、成功した試しはごくわずか、実際には死屍累々、というのが実態なのだが、実は販売店にとってはそこそこウケがよいのも事実だ。

 というのも、トータルソリューションというお題目がついたシリーズは、一式を導入するための専用什器やPOP、販売マニュアルなどが用意されているため、店員が手間を掛けることなく導入できるからだ。売るにあたっても同じシリーズの中で製品を組み合わせるだけでよく、ついで買いも誘発させやすい。販売店にとって、客単価を上げられる製品というのは実にありがたい。

 また万一、製品の組み合わせによってうまく動作しないケースがあっても、メーカーに責任を負いかぶせやすいし、さらに不人気で売れ行きがサッパリという場合も、メーカーにいちゃもんをつけて返品しやすいというのが大きな理由だ。

 こうしたことから、今後もトータルソリューションをうたう製品群は、決してなくなることはないはずだ。言えることはただ一つ、この言葉を使っている製品群があれば、ユーザーは疑って掛かるのが得策ということだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月27日 更新
  1. マウスコンピューターがPC全製品の受注を停止 法人向けPC「Mouse Pro」も購入不可能に 販売再開は2026年1月5日から順次 (2025年12月26日)
  2. そのアプリ、本当に安全ですか? スマホ新法で解禁された「外部ストア」と「独自決済」に潜むリスク (2025年12月26日)
  3. さらばWindows 10、ようこそ“画面付き”パーツ 古参も新規もアキバに集った2025年を振り返る (2025年12月26日)
  4. 25Gbpsインターネット時代の“モンスターマシン” ミニワークステーション「Minisforum MS-02 Ultra」を試す (2025年12月25日)
  5. Ryzen 7×GeForce RTX 5050 Laptop GPUの「ASUS TUF Gaming A16 FA608UH」がセールで16万9800円に (2025年12月25日)
  6. HHKB Studio専用の「木製」「アルミ製」キートップが登場 PFUダイレクトで1月5日発売 (2025年12月25日)
  7. 「買うならお早めに」が悲痛な叫びに変わった年末 猛暑の後に“価格高騰”の寒波が襲った2025年PCパーツ街 (2025年12月25日)
  8. 「テクノロジーが前面に出すぎていた」――アイロボットジャパン新社長が語る、ルンバ復権への“原点回帰” (2025年12月25日)
  9. 高コスパNASから小型スマホの救世主まで! 2025年にグッと来た「デジタル仕事道具」ベスト5 (2025年12月24日)
  10. ソースネクストが8万9800円(期間限定で7万4800円)の「Windows 11 Pro 15.6インチノート型PC 1TB」を販売開始――ストレージ容量を倍増 (2025年12月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー