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» 2018年10月16日 16時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:メーカーが正式発表前の新製品を「チラ見せ」する裏事情 (1/2)

新製品の正式発表前に行われる断片的な予告は、見てワクワクすることもしばしばだが、あまり早くに新製品の手の内を競合他社に明かすのも考えもの。ではそれらは何のために行われるのだろうか。新製品予告の背後にあるさまざまな理由、そして思惑について見ていこう。

[牧ノブユキ,ITmedia]
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 新製品が正式に発表される前に、断片的な情報の「予告」が行われることがある。ここ十数年で日本でも一般的になってきた「ティーザー広告」など、製品の一部を見せて期待感をあおるスタイルもあれば、内容を一切明かさず、何月何日に重大発表といったように日付以外の内容を伏せて予告するスタイルもある。

 これ以外にも、自社開催のイベントなどで、先に計画がある新製品の存在を明かすパターンもある。発売予定日が決まっていなかったり、価格未定だったりと、通常の新製品発表では欠かせない要素が抜け落ちていたりするのだが、これも広い意味では新製品の予告とみていいだろう。

 しかしこうした新製品の予告は、ユーザーと同時に競合他社にわざわざ手の内を明かしてしまっているわけで、なぜ行うのか不思議に思わないだろうか。たとえ情報が断片的だったとしても、予告が早ければ早いほど、競合他社が対策を立てやすくなるのは明らかだからだ。

 にもかかわらず新製品の予告が行われるのは、別の面でメリットがあるからに他ならないが、当事者でもない限り、それらの全貌を知る人は少ないだろう。新製品予告の背後にあるさまざまな理由、そして思惑について今回は見ていこう。

新製品予告は消費者に買い控えを引き起こす

 こうした新製品予告の表向きのターゲットは一般消費者だが、それ以外にもメーカーが強く意識しているのが競合メーカーだ。むしろ、競合メーカーにダメージを与える目的で行っている場合も多い。

 というのも、新製品の予告には、競合他社の製品の売れ行きを鈍らせる力があるからだ。「あのメーカーから間もなく新製品が発表されるらしい」となると、購入を検討中だった消費者は、ひとまず新製品を見てから判断すべく、一時的に「買い控え」の状態に入る。このことが間接的に、競合他社の売れ行きにダメージを与えられるというわけだ。

 この買い控えは、ティーザー広告が出てから、実際に製品が発表されるまで続くため、その期間が長ければ長いほど、競合他社のダメージは大きくなる。もちろん最終的に発表される新製品が魅力的でなければ、買い控えの反動で他社製品がドッと売れかねないため、最低限の裏付けは必要になるが、実際に売れ行きがピタッと止まったりするからばかにできない。

 注意したいのは、この時点で購入の可否を判断できるレベルの情報を出してしまうと、買い控えの効果がなくなってしまうことだ。新製品の情報が曖昧だからこそ、消費者が買い控えに走るのであって、予告の段階で判断できる情報が明らかになってしまうくらいなら、やらないほうがマシということになる。

同等品を先行発表して競合他社の新製品をつぶす

 一方、これらとは全く逆に、発売はまだ数カ月先であるにもかかわらず、具体的な内容も含めて、新製品の情報を明かしてしまうこともある。こちらも競合他社を意識しているといえばそうなのだが、ニュース性も重視しているのが、前述のケースとの大きな相違点だ。

 なぜなら、一般的にあるジャンルの新製品がニュースとして報じられる場合は、どれだけ早いタイミングで発表されたかが重要であって、発売時期はあまり問題にならないからだ。極端な話、よく似た新製品が、「A社は今日発表で半年後に発売」「B社は明日発表で1週間後に発売」だった場合、ニュースとして取り上げられやすいのは、発表が早かったA社だ。

 これを逆手に取って、競合他社の新製品のニュース性をなくすことを目的に、いち早く新製品を発表するパターンもよくある。競合他社が近いうちに新製品を発表するという情報を事前につかみ、その効果を弱めるために、その直前を狙ってそれとバッティングする新製品の予告を行うわけである。うまくいけば、他社こそが二番煎じというイメージを植え付けることができ、発売後の売れ行きにも大きな影響を与えられる。

 自社開発の独自技術が搭載された製品と異なり、PC・スマートフォン関連のサプライやアクセサリーのように2〜3カ月あれば模倣品が作れてしまう製品では、こうしたやり方が通用してしまう。メーカーの海外からの仕入れを仲介している代理店を経由して、競合他社がこうした製品を買い付けたらしいという情報をキャッチし、それをもとに競合する製品を仕入れ、いち早く発表するというわけである。

 またこれとは逆のパターンで、競合他社が容易に追従できない独自技術を備えた製品を、意図的に早いタイミングで発表することもある。前述のような効果に加えて、独自技術を備えた製品は、たとえ店頭に並ぶまでに数カ月のブランクがあったとしても、他社が追従してくることは容易ではないからだ。こちらは前述の買い控えを消費者の間に起こさせるという意味で、強力な効果がある。

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