メーカーが正式発表前の新製品を「チラ見せ」する裏事情牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2018年10月16日 16時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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新製品予告の反響を見て生産ロットを決定するワザ

 新製品予告のもう一つの目的として、リサーチが挙げられる。

 新製品が発売される度にティーザー広告を行っていると、その段階でどれぐらいの反響があったか、データが蓄積されてくる。これらを実売データと結び付けることで、このくらいの反響があれば、最終的にこれくらい売れる、という相関関係が浮かび上がってくる。

 これを使えば、ティーザー広告の反響から、生産数量を見極められるようになる。特に最近では、インターネットを通じて反響を数値化しやすくなったため、この方法の信頼性は高まりつつある。さすがにティーザー広告の段階まで進んだ新製品を、ウケが悪いからといって発売せずに済ませるのは困難だが、生産数量を絞ることでデッドストックをとなる危険を減らすのには役立つ。

 また、具体的なスペックの公表を伴った新製品予告であれば、ユーザーからの評価も聞くことができるし、それが設計の変更を伴うものならまだしも、カラーバリエーションの追加のように対応が容易なもの、また価格の引き下げなどタイミング的に手が打てるものであれば、その時点で対応することも可能だ。

企画や開発担当者による自己チューな発表も?

 さて、ここまで見てきたのは、どちらかというとポジティブな理由によるものだが、中には後ろ向きな理由で、やむを得ず行われる新製品予告もある。一体どんな理由によるものだろうか。

 まず一つは、株主へのアピールだ。株主総会を前にして、会社の業績や先の見通しなどにポジティブな要因があまりない場合に、魅力的な新製品の予告を紛れ込ませることで、株主の批判の矛先をそらすわけである。

 このパターンで重要なのは、詳細な仕様はシークレットなままにしておく、ということだ。というのも、あまり具体的な仕様まで公開すると、それがイマイチな製品だった場合、かえって揚げ足を取られかねないからだ。ティーザー広告をベースに、ほんのわずかなプラスアルファを公開する程度にとどめておけば、批判を回避しつつ、株主の期待感を満たすことができる。

 もう一つ、対外的に予告しているように見えながら、実は社内に向けて新製品予告を行っていることもある。例えば、期日までに新製品の発売にこぎつけられなかったのを、さも間に合ったかのように社内にアピールするために行われる新製品予告がそれだ。

 どんな事情によるものなのか見ていこう。製品の企画や設計に携わるメーカーの担当者は、年間または四半期単位で、業務上の目標を設定していることが多い。例えば、自分が担当する製品でいくら売り上げを上げる、新製品を何個発売する、といった具合だ。

 こうした目標がある中、新製品が期中に発売するのが難しいとなった場合、ひとまず予告だけを行うことで、発売へのフェーズにはたどり着いたかのように見せるというわけだ。はたから見ると実にばかばかしいが、新製品一つで査定が変わり、ボーナスの額も変化してくる担当者にとっては必死である。

 これに近いパターンとして、部署異動が決まった担当者が、その時点で発売直前だった新製品がなかったことにならないように、発売予告だけをブチ上げた後に姿を消す、というケースもある。

 多数の新製品の企画が同時に動いてるようなメーカーでは、担当者の部署異動によって、企画中だった新製品が凍結になることもしばしばだ。それまで手塩にかけて開発してきた新製品が、自分がいなくなった途端に凍結されるのは、担当者にとっては何ともやりきれない。

 そこで、いち早く予告を打って世にその存在を知らしめることで、後任の担当者がその製品をお蔵入りにすることがないよう縛り付けてしまうというわけである。消費者であるわれわれからしてみると迷惑な話だが、やたら発売日が先の新製品予告や、具体性に欠ける新製品の発表を見たら、上記に当てはまる要素がないか、考えてみるのも一興かもしれない。

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