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» 2018年11月29日 15時00分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:“見せ球”の製品に引っ掛からないために知っておきたいこと (1/2)

メーカーが用意する製品ラインアップの末席には、ニュースリリースなどで見出しとなるためだけに追加された、実用性無視・価格重視のローエンドモデルが存在することがある。こうした「見せ球」を見抜けずに買ってしまう人は、実は少なくない。どのようにすればこれらを見抜き、回避できるのだろうか。

[牧ノブユキ,ITmedia]
work around

 PCやスマートフォン、タブレットなど、コストパフォーマンスの高い新製品が登場したというニュース記事を目にして、いざ直販サイトに買いに行ったところ、上位モデルにフラフラと目移りし、結局そちらを買って予算をオーバーしてしまった経験は、多くの人にあるはずだ。

 このように、ローエンドモデルの価格につられて買いに行ったところ上位モデルを買ってしまう行為は、財布のひもを握っている家族などからは、計画性がないとか、こらえ性がないとか、何かと批判の対象にされやすい。

 確かにその場に至るまで考慮していなかった点は責められるべきかもしれないが、その製品を知るきっかけになったローエンドモデルに飛びつかなかったのは、ある意味で正しい選択と言える。なぜそのように言えるのか、製品ラインアップに込められたメーカーの思惑について今回は見ていこう。

メーカーも売る気がない、見出しのためだけのローエンドモデル

 新製品のラインアップを企画するとき、メーカーが意識するのは、ローエンドにあたるモデルの価格だ。なぜかというと、ニュースリリースやそれを元にしたニュース記事で紹介されるとき、ローエンドモデルの価格だけが見出しに記載されるからだ。少なくとも見出しの限られた文字数の中に、ラインアップ全ての価格が盛り込まれることはない。

 それ故、メーカーはローエンドの製品の価格を、どこまで見栄えよくするかに苦心する。例えば、10万円きっちりにするのではなく、9万8000円と1桁下げた価格にしておけば、ニュースでは「○○社が新モデル発表、価格は9万8000円から」となり、大台を切った割安感を印象付けられる。ある意味、スーパーの特売チラシなどにも通ずるものがある。

 もっとも、毎回こうした、うまい具合に大台を切ったモデルが存在しているわけではない。原価との関係で、大台を切るところまで売価を引き下げれないこともしばしばだ。そのような場合は、一体どうするのだろうか。

 こうした場合にメーカーが取る手段は1つ。それは、実用性を下げてでも、9万8000円で販売可能なローエンドモデルを、無理やりラインアップに追加することだ。つまりもともと存在していたラインアップの下に、PRのためだけのモデルを追加するわけである。こうすれば、名実ともに「9万8000円から」と名乗ることができる。

 このローエンドのラインアップは、実用性は二の次に、PR向けで追加されたため、製品として見た場合は、機能面や性能面などに問題を抱えていることが多い。例えばPCやタブレットであれば、ハードウェアレベルで原価を削減可能な箇所が容赦なく削られているため、メモリやストレージの容量が少ない、バッテリーの容量が少ないといった問題がある。

 そもそもメーカーからしてみても、これらローエンドモデルは存在さえしていてくれればよく、売ることに積極的ではないのだが、ユーザーの中には「上位モデルに誘導するメーカーの手口に乗ってしまうのは負け」とばかりに、最初にニュースで目にした9万8000円のローエンドモデルに固執し、購入に至ってしまう人がいたりするので困りものだ(最初からからくりを分かった上で、オモチャ代わりに最安のローエンドモデルを購入するユーザーもいるのだが)。

“最も〜”など、あちこちに存在する「見せ球」

 上記は価格の訴求を目的としたケースだが、同様の「見せ球」に相当するモデルは、この業界のあちこちに存在している。

 例えば、業界最軽量をアピールしていたデバイスが、実はバッテリーの容量が大幅に削減されていて、実際に携帯して使い続ける上ではACアダプターの携行が欠かせず、持ち歩く重量でみると最軽量ではないというのは、その典型的なパターンだ。

 またこれとは逆に、非常に長い駆動時間をアピールするものの、それだけバッテリーが大容量なせいでボディーが異常に分厚い……というパターンもある。最近は現物を見ずにカタログスペックだけ確認して通販でオーダーすることも多く、「届いてびっくり」ということも少なくない。

 メーカーとしても、こうした製品を無理にラインアップに加えたくはないわけだが、実際に存在しない製品をアピールに使うわけにはいかない(景品表示法からしてヤバい)。その点、たとえ生産量が極小で、売る気が全くなかったとしても、この世に存在している製品ならば何らおとがめはない。こうして、おかしな「見せ球」製品が、ラインアップの末席に加わるというわけだ。

 悲惨なのは、これが見せ球であることを見抜けず、うっかり買ってしまうユーザーだ。筆者の主観だが、こうした人は発信力があることが多く、カスタマーレビューやブログなどでやたらと失敗談を訴えたりするのだが、多くの読み手にとっては見せ球であることは周知の事実で、読んでいていたたまれない気持ちになることもしばしばだ。

 余談だが、中古製品の買い取りでよく見掛ける「最大何円の下取り」とか「最大何%割引」という表記も、からくりはこれと同様で、実際にそれだけの下取り額、割引額を実現しているのは一部のアイテムだけだ。しかし、これについては見抜けても、前述の「見せ球」製品は、あっさりだまされてしまう人も少なくないのが実情である。

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