ではどうすればよいかというと、話は簡単だ。その製品について最初に知った段階で、そのきっかけになったローエンドモデルは存在しないものと見なし、その上のモデルだけを候補とすればよい。こうすれば「見せ球」がなくとも魅力的な品であるか否かが判断できるし、また実質的にどれくらいの予算が必要になるかも見当がつく。
もっとも、ラインアップにおけるあらゆるローエンドモデルが「見せ球」というわけではないので、それを見抜くプロセスは必要だ。例えば、ラインアップに4つのモデルがあったとして、ローエンドモデルは9万8000円で、その他のモデルは13万円、15万円、17万円と価格が均等に分布している場合、これはあからさまに怪しい。
なぜなら、上位3つのモデルの価格差がそれぞれ2万円で分布しているところ、ローエンドモデルだけはドンと引き下げられて大台を割っているからだ。「見せ球」の意図があるとみて、ほぼ間違いないだろう。
ただし最近は、価格以外の要素もいじることで、一見しただけでは「見せ球」か否か判断できないように手を加えるケースも増えてきた。例えば容量が、64GB、128GB、256GB、512GB、1TBと均等になるべきところ、128GBモデルをラインアップから外して64GB、256GB、512GB、1TBの4モデルとし、また一部モデルはメモリ容量も変えるという手口だ。
このように複数のパラメータに手が加えられると、ユーザーの側から見て、価格の分布だけでローエンドモデルが「見せ球」なのかを判断するのは難しくなる。
現時点で、安全牌といえるのは、メーカーが用意するラインアップのうち、ローエンドモデルについては、無条件に候補から外して考えることだろう。もしCPUに複数のグレードがあり、それぞれにラインアップが用意されていれば、最下位グレードのCPUが組み込まれたラインアップを丸ごと、候補から外して考えるようにすればよい。
ニュースリリースの見出しは文字数の制限もあり、最安の価格しか記載できないのは致し方ない。そうした事情を知った上で、メーカーが作る製品ラインアップの意図を見抜けるようになっておけば、いざ製品を買いに行って予算よりも上のモデルにシフトすることになっても、トータルで得られる満足感は高くなるはずだ。
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