コラム
» 2019年01月23日 06時00分 公開

きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。おっさんなんだぜ。それで:おじさんでも「美少女インスタ映え」 2019年はバーチャルでなりたい自分になれる「アバター元年」か (1/2)

VTuberでもなく、ビジネス現場のVR利用でもない、“もう1つの人生”をアバターとして生きる人々。

[広田稔,ITmedia]

 Oculus RiftやHTC VIVE、PlayStation VRといった代表的なVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)が発売され、「VR元年」と呼ばれた2016年から早3年が経過した。当時に比べると2019年現在、VRの認知はずいぶん進み、店舗で遊ぶ「ロケーションVR」やB2Bの分野では活用されているものの、一般家庭では普及したという状態には程遠い。ただ、将来に向けての種は今でも着実に蒔かれている。

 1月8〜11日に米国ラスベガスにて開催された家電見本市「CES 2019」でも、PC向けVR HMD「VIVE」シリーズを手掛ける台湾HTCが、視線追跡が可能な「VIVE Pro Eye」と、プレミアムPC VRシステムをうたう「VIVE Cosmos」を発表した。

 世間的な注目は、いまだ多くが謎に包まれているVIVE Cosmosに集まっているが、VIVE Pro Eyeの方もポテンシャルは高い。ユーザーの目線を取得できるようになることで、目での操作を実現したり、負荷の軽減と高画質の描画を両立させたりするなどの使い方が可能だ。

 そして筆者としては、この視線追跡が今、ネットで関心が高まっている“自分自身のアバター化”に大きな表現力をもたらしてくれると感じている。2018年からの背景をまとめていこう。

ビジネス・プロシューマー向けの「VIVE Pro」に視線追跡機能を足した「VIVE Pro Eye」。目での操作やグラフィックス負荷の軽減以外にも、バーチャル空間に店舗を作り、自社製品を競合と並べてどう目線が奪われるかを調べるなどのマーケティングにも使える

VTuberだけでない、アバターの身体で生きるトレンド

 2018年は「バーチャル」という言葉がメディアに多数露出した年だった。といってもVRの方ではなく、けん引したのは「バーチャルYouTuber」(VTuber)だ。

 VTuberは、VRシステムやWebカメラなどを利用して体や顔の動きを取得(モーションキャプチャー)し、2Dや3DのCGキャラクターに反映して、生身のYouTuberのように動画や生放送を行う。一見、アニメやゲームのキャラと同じように見えるが、動画や生放送のコメントで交流したり、Twitterでキャラ同士やファンと会話したりと、キャラでありながら人間と同じ時間を生きているのが大きく異なる。

 2017年末に一気にネットで注目を集めたVTuberだが、2018年はテレビのニュース番組が何度も特集を組んだり、冠番組を持ったり、CM出演や企業・団体の公式キャラとして起用されたり、はたまた雑誌のグラビアを務めたりと、ネットを飛び出して活躍した年になった。

 特にこの年末年始は企画ラッシュで、キズナアイをはじめとするライブが開催され、NHKが「NHKバーチャルのど自慢」を放送するなど、一気に「表」に浮上した印象だ。

 そうしたバーチャルタレントとして大成するのを目指し、多くの新人が参入し続けている。「バーチャルYouTuberランキング」を提供するユーザーローカル調べでは、2018年12月にVTuberが6000人を突破するなど、競争が激化している。そして残念ながら、思ったほど動画再生数やチャンネル登録者数が伸びなかったり、マネタイズできなかったりなどの事情で2018年末を区切りに活動をやめるというVTuberも目立った。

 一方、そうしたVTuberの流れと並行して起こっているのがアバターとして生きる人々だ。VTuber自体があまりにも目立ってしまったため混同されがちで、メディアもVTuberとして扱ってしまうことも多いが、こちらはタレントではなくCGの体で「なりたい自分になる」というのが目的だ。まだ呼び方は定着していないものの、「Vの者」や「アバタープレイヤー」と呼ぶ向きもある。

 アバターを使ったコミュニケーションサービスは、それこそMMORPGや「セカンドライフ」、スマホアプリなど過去に数多くリリースされてきたが、VRでは身体性を伴うのが新しい。例えば、「VRChat」のようなソーシャルVRサービスを使って、イケメンや美少女、動物、ロボットなど、自分が望むさまざまな見た目になれる。

 VRゴーグルを装着し、両手にコントローラーを持ってCGキャラクターに“憑依”(ひょうい)し、バーチャル空間の鏡で自分の変身した姿を見ると、そこに映るアバターが自分の動きに合わせて動く。これは不思議な体験だ。

 何より他人からの視線が大きく変わる。かわいい見た目なら、中身が男性であっても割とかわいい子として扱ってもらえるわけで、これは楽しい。例えるなら、リアル世界において「ゆるキャラ」の着ぐるみに入ると、中身が誰であろうとみんなゆるキャラとして「キャー」や「カワイイー」と寄ってきて喜んでくれる感覚に近いだろう。

 VRChatでは自分の好みのアバターになりきって、みんなでゲーム大会を楽しんだり、修学旅行のように会話しながら一緒に寝落ちしたり、さらには結婚したりと、バーチャルでもう1つの人生を生きている。PC USERの読者なら、Windows(=リアル人生)の上でVMwareを動かし、別のOS(=バーチャル人生)を動かすといった方が分かりやすいかもしれない。

 VRChatだけでなく、Twitterでアバターを駆使して自撮りするなどの動きも出てきている。男性が女性アバターの見た目をまとう「バ美肉」(バーチャル美少女受肉)を果たした人の間で、「#バ美肉自撮り部」なるハッシュタグも生まれている。「いいね」を集めるためにシチュエーションや背景を盛りまくった写真をInstagramに投稿している「インスタ女子」と同じ心理……かは分からないが、かわいい女の子は被写体として映えるわけで、いろいろ撮りたくなってしまう気持ちは理解できる。

 上のツイートはVR業界で有名な方々なのだが、Twitterではバーチャルの肉体として自撮りを披露してくれている。

 スマホアプリでも、アバターを読み込んで実写合成できる「VPocket」や、読み込んだアバターに言葉をつけてLINEスタンプのように使える「Vスタンプ」というアプリも出てきた。「VRM」という日本発の3Dキャラクター向けのファイル形式も登場し、ソフトウェア間におけるアバターの互換性も保とうという動きもある。

「VPcket」はVRM対応の3Dアバターファイルを読み込んで、実写合成して撮影できるiOS/Androidアプリ(画面=左)。「Vスタンプ」もVRMファイルを取り込んで、3Dアバターや文字の位置を調節してオリジナルスタンプを作れるiOS/Androidアプリだ(画面=右)

 考えてみれば、FacebookやTwitterなどのSNSで使うユーザーアイコンも静的なアバターのようなもので、実際に会ったことがないがネットでの発言をよく見かける人はアイコンで想起することが多い(そして実際に会うと「あっ!あのアイコンの人!」となる)。2018年はそれが身体として2D/3Dモデル化を果たした年といえるだろう。

 これは誰かが言わなければならない話で、別にアバターの体を得たからといってVTuberとして無理にタレントを目指す必要はないのだ。好きな身体を得て、気が向いたときに身近な人やネットで知り合った同好の士と楽しくコミュニケーションする。それだけでも人生が豊かになって、十分に意義があることだ。

 2018年の「アバター化元年」を経て、2019年はさらに関連ツールが充実していきそうだ。ちなみにアバターといえば、スマホアプリの「ZEPETO」も流行中だが、こちらはリアルの延長でSNOWを使って自分の顔を「盛る」ほうからのアプローチになる。

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