ブラシ遅延が何フレームだとか、何ミリ秒(ms)だとかとか、言われてもよく分からないと思います。自分も正直測っていながらよく理解していませんでした。そこで、ちょっと感覚で分かるように運動しておきましょう。タブペンを持ったつもりになって、目の前に大きめの円を1秒で描いてみてください。
1秒ならば、別に急いで描いた! という感じでもないかと思います。それでも、仮に遅延が100msならば、時計の針で6分ぶんも、ペン先と線が離れてしまいます。
次に、文字を素早く書いてみてください。かなり雑に書けば1秒に5画ぐらいいけると思います。ここで仮に遅延が200msとするなら、書いている画はほぼ表示されないまま次の画を書き始めなければいけないということです。
では、まずはブラシの遅延を測ります。Photoshop CCでできる限り負荷の軽いブラシを作い、いつもの方法でペン先が横線を通り過ぎてから描線が横線を通り過ぎるまでの時間を、120fpsで撮影して測ります。
Cintiq Pro 16は、同シリーズ中で最も表示遅延が大きい部類の機種だということにも注意してください。自分が測った限りだと、Cintiq Pro 24より20msほど遅かったです。そのため、遅くない液晶タブレットと比べたい場合には、この差を20msほど大きく見ておく必要があります。
また、読者の皆さんは「クリスタはどうなの?」と思われるでしょう。CLIP STUDIO PAINTは、軽いブラシでは全体的にPhotoshopより約15ms速い以外は、デバイス間の差は同様でした。他には、母艦にUSB接続しても速くなるわけではないとか、10.2インチのiPadよりも12.9インチのiPad Proの方が微妙に遅いとか、などなど興味深い結果も読み取れますね。
個人的には、通常のディスプレイより遅い以上は常用にしたいと心から思うことはないとしても、無線接続としては驚くほど速いし、普通に作業できるよねという感覚です。
また、画面の広い範囲を一斉に変更した場合についても調べましたが、遅延が液晶タブレットより急にひどくなることはありませんでした。
続いては、iPadでの表示品質です。無線で送信されるということは、素のディスプレイ信号からかなり圧縮されているはずです。今回手元では上記のテストや、ズームイン/ズームアウトなどを目視でチェックしましたが、動画方式のサブ画面ツールでありがちな、色あせや解像感の低下/圧縮ノイズは見られませんでした。
また、ペンのようなシャープなブラシを使っても、十分なシャープさで描画されていました。
他の画面共有ツールだと、画面解像度がちょっと低いというのはありがちなので、これもかなりうれしい点です
明らかすぎるので、うっかり書き忘れていましたが、iPadが液晶タブレットと比べて明らかに劣っているのがサイズの選択肢です。液晶タブレットだと12型ぐらいから32型まで、非常に幅があるのですが、iPadは8型〜13型と、ディスプレイとしては小型のものしか選べません。この時点で「小さすぎる……ありえない」と判断する方もいるでしょう。
昔は、液晶タブレットといえば「大きいほど偉い」でした。ですが、最近は精細な画面やiPadが普及してきて、自分が実は小型タイプと相性が良かったんだと発見しやすい環境になってきています。大型の液晶タブレットのユーザーから、「iPad Proを使うようになって、液タブも16型ぐらいが使いやすい気がしてきた」といった意見が、少しずつですが、聞かれるようになりました。
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