さて、そろそろ、MacBook Airと12.9インチiPad Pro、10.2インチiPadでSidecarをイラスト用途に使ってみた感触をまとめたいと思います。
遅延は期待していたよりずっと小さく、素早く描いても表示がついてきます。表示品質も無線のために圧縮しているとは思えないほど良いです。接続も、液晶タブレットのような煩雑なケーブルや電源接続も、ソフトウエアのセットアップも必要としません。Macの横にポンと置いたiPadが、まるでケーブルをつないだディスプレイのような動作をするわけです。まさにスティーブ・ジョブズ氏が10年前に「魔法のよう」と言いながらiPadを紹介したのを思い出すような感覚でした。
そして、この高レベルな技術の中で「MacでApple Pencilを使える」という極めて価値ある機能を実現していて、液晶タブレットに似た作業を可能にしています。
一方で、イラスト製作の主戦力として液晶タブレットと比較すると、
これらのような作業効率、品質、快適さが低下したり、アプリによっては使用を諦めるレベルの不具合が残っていたりして、液晶タブレットはもういらない、と言えるものではありませんでした。
タッチ操作を受け付けない点も、Macの世界観を守っていて偉いとも思いますが、iPadの世界観とは明らかに食い合わせが悪いです。この点は、Windowsのようなタブレットもデスクトップもごっちゃになってしまっている状況が恋しくなりました。
以上のように、液晶タブレットをリプレースするには我慢が必要ですが、例えば普段はiPadネイティブで描く人が、メモリを大量に消費する終盤の工程だけSidecarを使う、というスタイルならば、接続などはもはや液晶タブレットはおろかペンタブレットよりも楽ですし、かなり受け入れやすい仕上がりになっていると思います。
また、サブ用途どころか、業務のメイン機材としてバリバリ使っているプロの方がいるというのも、心強い事実ですね。
いやーしかし……夢がありますよね。普段はWindowsとAndroidメインで、iPhoneやiPadは必要に応じて買うけど深入りはしないという「Apple弱アンチ」な私ですが、デバイスとデバイスだけでなく、ソフトとハードの水平+垂直統合を極めたメーカーの凄味を思い知らされた機能でした。現時点では煮え切らない結論になってしまいましたが、今後も注目していきたいです。
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