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» 2020年01月03日 07時30分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:2020年予想 2つの第10世代CoreでモバイルPCが変わる? 5G到来にiPhoneはどうなる? (1/2)

2020年は2種類の第10世代Coreプロセッサによって、モバイルPCの設計トレンドに変化が起こるかもしれない。一方、国内では立ち上がりが鈍いと予想される5Gだが……。

[本田雅一,ITmedia]

 2020年のPC動向で最も注目されるのは、やはりメーカーがIntelの「第10世代Coreプロセッサ」をどのように生かしてくるかだろう。薄型軽量ノートPCの設計をどう最適化してくるかに注目したい。

10th gen core Intelの「第10世代Coreプロセッサ」

 2019年にリリースされたノートPC向けの第10世代Coreは、10nm製造プロセスを用いた「Ice Lake(アイスレイク)」と、現行のデスクトップPCと同じ14nm製造プロセスを用いた「Comet Lake(コメットレイク)」の2種類がある。第10世代Coreを採用したノートPCは少しずつ出始めたが、まだまだ旧世代の製品と混在している状況だ。

 もっとも本誌の読者ならば、2020年はプロセッサのトレンドにあまり大きな進展がないことは予感していることだろう。10nm製造プロセスのIce Lakeは出荷が始まったものの、クロック周波数が上がらないため、低消費電力向けにしか位置付けることができていない。この状況は今年も続くとみられ、Intelが2021年に予定している7nm製造プロセスの立ち上げまでは大きな変化は現れないと考えられる。

 しかし、これは薄型あるいは小型のモバイルPCにおいては悪い話ではない、とも捉えられる。

注目したいモバイルPCの設計トレンド

 例えば昨年、熱設計の枠を12W分も拡大させた「16インチMacBook Pro」は、14nm製造プロセスの時代がしばらく続くことを見越したものだった。

Macbook Pro 大画面化しつつ性能も強化した「16インチMacBook Pro」

 搭載プロセッサは前モデルを踏襲した第9世代Coreだったが、より高いパフォーマンスを引き出すためには、いかに多くのコアを同時に、より高い実クロックで、どれだけ長い間ブン回せるかの勝負になる。もちろん、それに見合うメモリ容量などのスペックも必要になるわけで、もろもろの状況に合わせこんだ結果の製品といえる。

 このセグメントには14nm製造プロセスながらWi-Fi 6やThunderbolt 3に対応するComet Lakeが投入される予定であるため、とりわけWi-Fi 6対応を目的に登場時期を見据えて買い替えたいユーザーは注目だろう。

 やや複雑なのは、第10世代Coreでは薄型軽量ノートPC向けのUシリーズプロセッサに関して、14nm製造プロセスのComet Lakeと10nm製造プロセスのIce Lakeが混在することだ。実際にはネーミングルールが変化しており、プロセッサ末尾にG7など「G」で始まる型名が付与されているのがIce Lake搭載モデルということになる。

 Ice LakeもWi-Fi 6やThunderbolt 3に対応するが、GPUのIris Pro Graphicsが11世代に進化し、AI推論命令セットの「DLブースト」やAI処理アクセラレーターの「GNA(Gaussian mixture model and Neural network Accelerator)」が内蔵されている。

 Intelによれば、Ice Lakeはマルチメディア処理やコンテンツ制作に適しており、Comet Lakeは(Ice Lakeにない)6コア12スレッドのモデルがあることなどから高い生産性を求める用途に適しているという。

ice lake vs comet lake ノートPC向けの第10世代CoreであるIce LakeとComet Lakeの比較

 このように変則的な構造になってしまっているのには、Intelのプロセッサ製造に関する問題、制約が関係しているが、注目はやはりIce Lake搭載モデルだ。「Surface Pro 7」をはじめ既に幾つかの採用製品が登場してきているが、春ぐらいまでにはさらに採用モデルが増えていくだろう。

 Uシリーズの熱設計電力15W枠は、最も多くのノートPCが採用しているだけに、多様なアプローチが期待できる。

Surface Pro 7 日本マイクロソフトの2in1 PC「Surface Pro 7」はIce Lakeを採用

薄型・軽量・長時間以外の価値を作れるか

 筆者が特に注目しているのは、判で押したように1kgを切るような薄型軽量モバイルPCばかりではなくなることへの期待だ。

 例えば、Lce Lakeを採用した日本HPの2in1 PC「Spectre x360 13」は、あえて薄くしないという選択をしたという。ボディーを厚くすることで熱設計に余裕を持たせられる上、バッテリーも大容量を搭載できる。この設計方針はMacBook Proにも通じる部分があるが、処理効率の向上による性能アップが大幅は望めない中にあっては一つの選択肢だ。

Spectre x360 13 Lce Lakeを採用した日本HPの2in1 PC「Spectre x360 13」

 また、多くのメーカーが企業向けはComet Lake、メディア処理やGPUを重視する個人向けはIce Lakeと、同じ15Wという熱設計電力枠の中で2種類のプロセッサを使い分けると考えられる。どのように設計方針を定めて作り込んでいくか、メーカーごとの手腕、企画力の見せ所といえる。

 両方のプロセッサが持つ特徴を、それぞれ最大限に生かすのであれば、熱設計に余裕を持たせることで実性能を引き上げるほうがいいのではないか、と思うからだ。Ice Lakeは動画や写真の現像などメディア処理、Comet Lakeでは最大6コアをどこまで生かせるか。無論、世界最軽量競争もいいのだが、この世代の勝負はいかに性能を引き出すかで特徴付けされると思う。

 一方、Macに関してはこの15Wの熱設計枠で作り込んだ製品が(現時点では)存在しない。MacBook Proの13インチモデルは第8世代Core Uシリーズ(Coffee Lake)を搭載しており、下位構成は15Wのプロセッサだが、上位構成は28Wのプロセッサなので、熱設計枠としては28Wだ。

 「MacBook Air」に採用されている7Wの第8世代Core Yシリーズ(Amber Lake:アンバーレイク)も、16インチMacBook Proに使われている45Wの第9世代Core Hシリーズ(Coffee Lake:コーヒーレイク)も、世代交代でWi-Fi 6対応を果たすだろうが、あくまでも現行製品の延長線上となる。

 それともMacBook AirにUシリーズより低消費電力・低発熱のYシリーズプロセッサを採用している背景に、別の伏線(新しい製品ラインアップ)があるのかどうか。Appleの製品戦略は必ずしもIntelのプロセッサロードマップに依存してはいないものの、ポッカリとあいているUシリーズの15W枠が使われない理由が見えないだけに注目している。

MacBook Air 2018年に設計を一新して再登場した「MacBook Air」。2019年モデルもUシリーズより低消費電力・低発熱の「Y」シリーズプロセッサを引き続き採用
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