AMDは1月6日(米国太平洋時間)、「CES 2020」の基調講演において、第3世代の「AMD Ryzen 4000 Series Mobile Processors with Radeon Graphics」(以下「第3世代Ryzen Mobile」)や、64コアの「Ryzen Threadripper 3990X」を発表した。
ステージでは同社のリサ・スーCEOが大きな拍手を持って迎えられ、それに答える形で「2020年は、去年(2019年)よりさらにビッグな年になる」とぶち上げた。
2019年のAMDは、日本においてもCPU単体の売上でIntelを上回る(BCNランキング調べ)など、大きく躍進。Intelを追い詰めるどころか、追い抜く勢いを見せている。
そんなAMDがCES 2020で最初に発表したのが、第3世代Ryzen Mobileだ。超薄型ノートPC向けの「Uシリーズ」、ゲーミングやクリエイター向けの「Hシリーズ」、プロフェッショナル向けの「PROシリーズ」を、2020年第1四半期(1〜3月)から順次提供する。
公演ではまず、Uシリーズの最上位に相当する8コア16スレッドの「Ryzen 7 4800U」が紹介された。スーCEOは、クリエイター向けの処理能力において10nmプロセスで作られたIntelの第10世代Coreプロセッサ(開発コード名:Ice Lake)を上回ること、7nmプロセスを採用したことで消費電力1W当たりの性能が大幅に向上したことをアピールした。
第3世代Ryzen Mobileを採用したノートPCとしては、Ryzen 7 4800Uを搭載するLenovoの「Yoga Slim 7」を紹介。同機を含めて、2020年内に第3世代Ryzen Mobileを搭載するノートPCが100以上登場するとスーCEOは予告する。
続けて、Hシリーズの最上位に相当する「Ryzen 7 4800H」が紹介された。こちらの比較対象は、第9世代Coreプロセッサのうち、モバイルPC向けの上位に相当する「Core i7-9750H」と、デスクトップPC向けの「Core i7-9700K」だ。
Core i7-9750Hを基準としてCPUの処理性能を比較した場合、IntelはTDP(熱設計電力)が2倍以上のCore i7-9700Kを持ってきてようやく36%の性能向上を得られるのに対し、Ryzen 7 4800HはTDPを45Wに据え置いたままでも46%速いことを示し、第3世代Ryzen Mobileの電力効率の高さを強調した。
さらに処理の最適化を期待できる機能が、「AMD SmartShift」テクノロジーだ。Ryzenと同社のGPU「Radeon」の間で、電力を動的にシフトする技術だという。
ゲーミングやコンテンツ作成など、用途に応じてCPUとGPUのどちらにパワーを振るか融通し合うことで、性能を最大限引き出す技術といえる。CPUとGPUの両方を開発しているAMDならではのアプローチでもある。
グラフィックス(GPU)製品としては、「Radeon RX 5600」シリーズを新たに発表した。上位の「Radeon RX 5700」シリーズと、下位の「Radeon RX 5500」シリーズの間を埋める性能のミドルレンジモデルで、米国では搭載グラフィックスカードを1月21日より順次発売する。想定販売価格は279ドル(約3万円)だ。
性能面ではシリーズ上位の「Radeon RX 5600 XT」と、同一セグメントで競合するNVIDIAの「GeForce GTX 1660 Ti」と比較。「Apex Legends」や「フォートナイト」といったタイトルにおいて、1080p設定におけるFPSがいずれも上回ることを示した。
基調公演のプレゼンテーションの最後には、第3世代「AMD Ryzen Threadripper」として64コア128スレッドを備える最上位モデル「Ryzen Threadripper 3990X」を発表した。参考販売価格は3990ドル(約43万7000円)で、2月7日からグローバルで提供を開始する。
ステージには3面のスクリーンが用意されていたが、これをフルに使って“画面からはみ出すグラフ”を表現。枠に収まりきらない性能の高さをアピールした。
性能面では、Intelの「Xeon Platinum 8280」を2基搭載した2万ドルのシステムと比較。スーCEOは「性能だけでなく価格もAMDの方がお得だ」と圧倒的なコストパフォーマンスの差を見せつけ、発表会を締めくくった。
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