約1年半ぶりにモデルチェンジとなった「iPad Pro」の話題は、大きく3つに分けて考える必要がある。Appleは新型iPad Proを導入するにあたり、「本体のハードウェアを更新」しただけでなく、同時に「iPadOS 13.4をリリース」し、さらに新たな周辺機器として「トラックパッドを装備したカバー兼キーボードのMagic Keyboardを発表」した。
このうちMagic Keyboardは5月の発売となっており、筆者も商品のある程度のディテールについては把握しているが、現物の確認はしてない。つまり、現時点で評価できるのは新しいハードウェアと、全てのiPadで利用できるiPadOS 13.4ということになる。
なお、Magic Keyboardはカメラが1つだけの前モデルとも互換性があるため、もし手持ちのiPad Pro(前モデル)に不満がないならば、まずは最新OSに更新した後、Magic Keyboardの登場を待つといい。
読者にはパソコンを主に使っている方も多いと思うが、新しいiPadOSとMagic Keyboardの組み合わせは、ノートPCの代わりに利用しようと決意させるだけの用意周到な仕掛けが施されている。
少なくとも筆者は、普段使っている「MacBook Pro」から持ち替えたとしても、そのまま違和感なく仕事をこなせるという確信を持った。しかも動画やカメラ現像などのメディア処理に関して言うならば、iPad Proはポータブルコンピュータの中でも、最もパワフルな製品の1つだ。
従来のマルチウィンドウシステムによる自由な使い心地を選ぶのか、パソコン的な使い方へと寄せてきたiPad Proのどちらを選ぶのか、大いに頭を悩ますことになるだろう。
ここでは12.9型モデル(1TBストレージ)のレビューも含め、新型iPad Proのインプレッションをお伝えしたい。
新しいiPad Proを使ってみた最初の感想は「従来機とほとんど変わらない」というものだ。もちろん、後述するように新しいカメラ(「Proのカメラ」と呼称されている)や光距離センサー(LiDAR)の装備といったトピックはある。
しかし、P3準拠で600nitsの輝度がある「Liquid Retinaディスプレイ」や、縦横どちらでも豊かなステレオ体験が得られる4スピーカーのサウンドシステム、「Face ID」対応のToFセンサー付きインカメラ、極めて軽量で薄いボディー設計、追従性の高い「Apple Pencil」のスキャンレートなど、従来の特徴はそのまま引き継がれており、パフォーマンスに関しても体感上は有意な差はない。
これはカバー兼キーボードの「Smart Keyboard Folio」(新モデル用はAppleマークのエンボスが加えられた他、黒に近いダークグレーになった)も同じで、カメラ部の切り欠きが変化してはいるが、旧モデルとタッチは同じで使い勝手も同一。重量もほとんど同じ(12.9型用で400g+α程度)だ。
Smart Keyboard Folioのほんの少しの色の違いを除くと、どちらを使っているのか、時折分からなくなってしまうほど体験レベルは同じだ。もし新しい二眼カメラやLiDARが必要ないならば、前モデルのオーナーは買い替える必要はない。
一方、これからiPad Proの購入を検討している人にとっては、カメラやLiDARといった要素より何よりも、購入しやすい価格になっていることの方が大きい。これはフラッシュメモリの価格が下がったからだ。「MacBook Air」もSSDの価格が下がっていたが、iPad Proにおいても各容量の価格が引き下げられている。
つまり、これまで迷っていた人にとっては、まさに「買い時」が来たということだ。
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