こうして見ると、同じ「パッケージの一新」であっても、こうしたPCアクセサリーやパーツと、冒頭で紹介したローソンPB食品の例とでは、性質が全く異なることが分かる。
食品の場合、ユーザーに一度パッケージを覚えてもらえれば、次からリピート購入してもらえる可能性が高い。今回のローソンPBは分かりやすさの部分でケチが付いたが、そこさえ一定レベルに達してさえいれば、ブランディング優先でパッケージを一新する意図は(家庭に溶け込むデザインというコンセプトはともかく)理解できる。
一方でPCアクセサリーは、紙やインク、クリーニング用品などのカテゴリーを除けば、スポットで購入する品ばかりだ。リピートするにしても間隔が数年単位になるのも珍しくなく、パッケージは分かりやすさが最優先、ブランディングは二の次となる。デザインは統一されているに越したことはないが、それを望んでいるのは店頭での見た目をよくしたいバイヤーで、それが最重要項目ではないことも、彼ら自身よく理解している。
もっともPCアクセサリーやパーツも、広告代理店に乗せられた経営陣が、ブランディング目的でパッケージの全面リニューアルをトップダウンで強行することがある。しかしそれらは志半ばで中止に至ることがほとんどだ。
それはPCアクセサリー・パーツの回転率が他業界に比べて驚くほど低く、店頭在庫の入れ替えが困難という事実を、経営陣が理解していないことが大きい。どんなに長くても数日あれば先入れ先出しで新旧パッケージの入れ替えが完了する食品に対し、PCアクセサリーやパーツの中には、数カ月に1個しか売れないにもかかわらず店頭に並び続ける製品も少なくない。
前述のLightningケーブルなど、ある程度回転することが見込まれる製品群だけならいざ知らず、全製品のパッケージを一斉リニューアルしようとすると、こうした回転率の低い製品のせいで、新旧パッケージが店頭で混在したまま、いつまでたっても入れ替わらない事態が発生する。当然ながら現場は大混乱だ。
現場ではこうした事態を回避すべく、旧パッケージ製品を引き上げたり、あるいは早期に売り切ってもらうために販売店に協賛金を払ったりするのだが、これらは売り上げに大きなダメージをもたらす。パッケージ一新による売り上げアップで回収できれば問題ないが、そうなることはまずない。
結果としてパッケージの全面リニューアルプロジェクトは頓挫し、後にはパッチワーク状態になったパッケージ群が残されることになる。PCアクセサリーやパーツの売場で大手メーカーの製品を見ていると、きちんとパッケージが統一され、更新も頻繁に行われているカテゴリーがある一方で、こうしたリニューアル失敗の余波か、完全に取り残された製品群もあるので、探してみても面白いだろう。
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