爆死したはずのPC周辺機器が忘れたころに「再デビュー」してくる裏事情牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2020年09月23日 11時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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 PC周辺機器の新製品ニュースを見ていると、かつて販売されていたのとそっくりの製品が、再び新製品として取り上げられているケースを目にすることがある。

 例えば、レーザー投影式のキーボードや、紙で書いた筆跡をPCに転送するペンデバイス、さらにはエルゴノミクスをうたうマウスなどでも「これ、前にそっくりなやつが売られていたよね?」という、既視感を覚えた経験がある人は多いのではないだろうか。

 気になって調べてみると、数年前に発売された製品はいつの間にか終息していて、それがあらためて新製品として投入される、という図式であることが分かる。発売元は従来とは異なるメーカーで、以前別ルートで販売されていたことには、一切触れていないというのがお決まりのパターンだ。

 こうした現象はどのようにして発生するのだろうか。PCの周辺機器やアクセサリーの業界ならではの事情を見ていこう。

終息した製品の情報は後世に伝わりにくい

 国内の周辺機器メーカーが海外メーカーから仕入れた製品が、期待に反して全く売れなかった場合、最初に契約した個数の納入が終わった段階で、製品は終息することになる。下手をすれば、初回ロットで仕入れたものの、セカンドロットがないまま姿を消すこともしばしばだ。この間、ほんの数カ月の出来事だ。

 こうした、売れ行き不振で姿を消した製品は、そのメーカーにとっては触れてはいけない黒歴史になることもあれば、ネタとして語り継がれる場合もある。どちらの場合も、「こんな製品があった」「盛大に爆死した」という、製品の詳細と爆死に至った事実がセットになった状態で、社内で長らく共有されるわけである。

 ところがこうした情報はあくまで社内限定で、他社に伝わることはあまりない。マーケーティングの担当部署では「あの派手にキャンペーンをひっさげて登場した某社の新製品、いつの間にか消えたけどどうしてだろう?」と不思議がられることもあるが、それもごく短期間で、すぐに忘却のかなたへと消えてしまう。

 そもそもPC周辺機器の業界は、アイテム数が異常に多く、また製品寿命も1〜2年あるかないかという製品がほとんどなので、直近の1〜2年ならまだしも数年を超えるスパンになると、競合他社がどんな製品を発売し、そして終息していったか、体系立って把握されていないケースがほとんどだ。

 特に最近では、紙の総合カタログを発刊するメーカーが減ってWebサイトでの情報提供が主軸になったこと、また自社サイトの直販など販路を絞り込むケースが増えたため、あるメーカーが取り扱っている製品の全貌すらチェックしにくくなってきている。現行製品ですら把握できないのに、過去の製品など覚えていられるはずもなく、また一時的に目に止まったとしても、後から思い出されるケースはまれだ。

当時を知らないメーカーを通じて「再デビュー」

 こうした中で、かつてある製品を国内メーカーに供給しながら、売れ行き不振で取引を打ち切られた海外メーカーが、日本再上陸を果たそうと、当時とは別の国内メーカーにコンタクトを取ることがある。

 売り込まれた国内メーカーの側は、かつて同じ製品をライバルメーカーが取り扱って盛大に爆死したことを把握していないので、取引にホイホイと応じてしまい、結果的にかつてとほぼ同じ姿のままの製品が、日本で「再デビュー」を果たすというわけである。

 もっとも、その国内メーカーの担当者は知らなくとも、こうした経緯はむしろユーザーの方が詳しかったりする。「これ前に見たことあるよね」「あっこれ友達が持ってた」といったネット上のリアクションによって、メーカーは初めて事態を把握するわけだが、既にその時点では契約を締結済みで、取り返しがつかなくなってしまっている。

 そして恐ろしいことに、そこで再デビューに失敗した製品は、さらにまた数年たって、3つ目の国内メーカーから再々デビューを果たしたりするわけである。その間、10年近い年月が経過しており、製品もそれなりに進化していたりするのだが、だからといって再々デビューまで行って成功したという話はいっこうに耳にしない。

 それだけ繰り返しデビューしても売れないということは、日本市場とは文化的に合わない何かがあるのだろうが、海外メーカーからすると、北米や欧州市場ではそれなりに数が出ているデバイスであり、日本だけ売れないのは代理店(日本メーカー)に問題があるに違いない──と考え、またぞろアタックを試みるわけである。

 中には、海外メーカーの営業担当者が途中で交代し、実際に過去の経緯を把握しないまま売り込んできているケースもあるので、二重にややこしい。

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