負荷が軽いゲームについて、もう少し検証してみよう。実ゲームを元にしたベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」で、画質を「最高品質」、フルスクリーンの設定を適用し、フルHD、WQHD、4Kの3パターンで結果を計測してみた。
FF14ベンチマークはDirectX 11を利用するが、相対的に負荷の少ないフルHDとWQHDのテストでは、無視しがたい大差を付けて第4世代RyzenがRyzen 9 3900XTに勝利している。第3世代Ryzenの中では比較的ゲームを得意としているRyzen 9 3900XTであっても、最新世代のRyzenを相手にするとこれだけの差をつけられてしまう。いささか衝撃的である。
現状でも、DirectX 11を利用するゲームタイトルは多い。それを踏まえると、今後ゲームにおいて第3世代Ryzenを選択すべき理由はほとんどない。
さらにいうなら、競合であるCore i9-10900KとGeForce RTX 3080を組み合わせた場合でも、スコアはフルHDで23000を超えるのがせいぜいである。第4世代Ryzenほど優れた結果は出ない。
より負荷の大きい「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」のスコアも確認してみよう。画質は「高品質」、フルスクリーンの設定を適用し、フルHD、WQHD、4Kの3パターンで結果を計測している。
グラフィックス負荷が大きく、GPUがボトルネックになってしまうWQHDと4Kの計測では、それぞれのCPUのスコアの違いは微々たるものである。しかし、それが軽くなるフルHDのテストでは、FF14ベンチマークと同様に第4世代の2つのCPUがRyzen 9 3900XTを突き放した。
特にフルHDで高いフレームレートを出したい状況では、第4世代Ryzenには大きなメリットがあるといえる。
最後に、システム全体の消費電力をチェックしよう。
起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Extremeを動作させた際の最高値を「高負荷時」として、ワットチェッカーで計測した。結果は以下の通り。前者がアイドル時、後者が高負荷時の値だ。
アイドル時の電力はどのCPU利用時でも大きく変わらない。しかし、高負荷時はRyzen 9 5900Xが465W、Ryzen 7 5800Xが430W、Ryzen 9 3900XTが452Wと、それなりに消費電力は大きくなる。
ただ、Ryzen 9 5900XとRyzen 9 3900XTを比較した場合、Ryzen 9 5900Xのピーク時の電力はわずかに13Wしか上昇していない。消費電力当たりのパフォーマンスの向上についても、AMDがアピールした優秀さは的外れなものではないといえそうだ。
ベンチマークテストの結果を見れば分かる通り、第4世代Ryzenプロセッサは特にシングルスレッド性能、ひいてはゲームパフォーマンスの向上に関し、前評判にたがわぬ優秀な結果を残している。これらは初代のRyzenから課題とされてきた部分ではあるが、第3世代Ryzenで競合とほぼ同等のレベルに上り詰め、第4世代でついに抜き去った。鮮やかなジャンプアップを果たしたAMDの堅実な仕事ぶりは、大いに賞賛されるべきだろう。
マルチスレッド性能に関しては既に定評あるRyzenがより強大な力を得たことで、第4世代Ryzenはシリーズにおける“ひとつの到達点”として、多くのユーザーの人気を集めることになるはずだ。
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