6月16日に突如発表された、デスクトップ向け第3世代Ryzenの新モデル「Ryzen 3000XTシリーズ」。既存製品からブーストクロック(最高稼働周波数)を少し引き上げているのが特徴で、国内では7月23日、つまり今日発売される。
“マイナーチェンジ版”といっても差し支えない違いしかないため、既存製品からの大きなパフォーマンスアップは見込めない。しかし、これから自作PCを組み上げたいというユーザーにとっては気になる製品であることには変わりない。
Ryzen 3000XTシリーズのラインアップは「Ryzen 9 3900XT」「Ryzen 7 3800XT」「Ryzen 5 3600XT」の3モデルである。今回はこれら全てを試せる「レビューキット」を使って、Ryzen 3000XTシリーズの特徴やパフォーマンスを確認していく。参考になれば幸いだ。
先に述べた通り、Ryzen 3000XTシリーズの各モデルは、既存のデスクトップ向け第3世代Ryzenプロセッサのブーストクロックを調整したものだ。ブーストクロックが100〜200MHz引き上げられたこと以外に変化はない。コアとスレッドの数はもちろん、TDP(熱設計電力)も据え置きとなる。AMDの想定販売価格も変わらない。
ただし、「Ryzen 9 3900XT」と「Ryzen 7 3800XT」については、ベースモデルでは付属していたCPUクーラー「Wraith Prism RGB」が付属しなくなる。「CPUクーラーの代わりにブーストクロックを引き上げた」といった感じだろうか。
なお、「Ryzen 5 3600XT」にはベースモデルと同様にCPUクーラー「Wraith Spire」が付属する。
問題は、100〜200MHz引き上げられたブーストクロックの違いがパフォーマンスにどの程度影響を与えるかという点にある。率直にいうと、多くの用途ではベースモデルから体感できるほどの違いは生まれない。
既に「Ryzen 9 3900X」や「Ryzen 7 3800X」を使っているユーザーが、あえて「XT」に載せ替えるほどのメリットはない。身もふたもないことを言ってしまえば、既存製品を簡易的にオーバークロックするだけで、パフォーマンス差を比較的簡単にひっくり返すこともできる。
Ryzen 3000XTシリーズは、あくまでも「今後新規に第3世代Ryzenを購入するユーザー向けの製品」という立ち位置であることは認識しておくべきだろう。
先述の通り、Ryzen 3000XTシリーズの想定販売価格はベースモデルと変わらない。具体的には以下のような設定となっている。
とはいえ、ベースとなった既存モデルの実売価格は、既にある程度こなれている。とりわけ、上位2モデルはCPUクーラーが別売となったことを考慮に入れれば、少なくともリリース当初はベース(既存)モデルの方がコストパフォーマンスに優れる状態になると思われる。
AMDによると、既存モデルも併売されるとのことなので、今後の価格推移が気になるところだ。
マザーボードについては「既存の第3世代Ryzenプロセッサが対応していれば初日から対応できる」とされている。「AMD X570」や「AMD B550」など、既存CPUが対応するチップセットを備えるマザーボードならそのまま利用できる。
……はずなのだが、筆者が所有しているX570マザーボードでは、Ryzen 3000XTシリーズを使うと起動できないトラブルが発生した。メモリモジュールを1枚に減らした上で「A1」に挿入することで何とか起動できた。後日公開されたUEFI(BIOS)アップデートを適用することで、この問題は解消された。
Ryzen 3000XTシリーズが登場する前に発売されたマザーボードでは、チップセットが対応していてもUEFIなどの都合でうまく動かない可能性もある。もしもうまく起動できない場合は、メモリ構成の変更やUEFIアップデートを試してみるといいだろう。
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