ビールだったら回収騒ぎ? PC周辺機器メーカーがパッケージの誤記を気にしない理由牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2021年01月18日 14時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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これ幸いと外注先に貸しを作るメーカー

 ちなみにメーカーにとっては、もう一つ別の思惑もある。それは外注先があらためて仕様通りの製品を生産、納品するにあたり、納期遅延の言い訳をさせないという目的だ。

 突き返した製品が外注先の倉庫を占有していると、再発注分の製品が入庫するスペースを確保できず、さらなる納期遅延の言い訳に使われる可能性がある。B級品として買い取り、外注先の倉庫を空にすれば、それらを口実にした納品のさらなる遅延を防げるというわけである。「買い取ってやったぶん次は値引きしろ」と要求する材料にも使える。

 こうしたメーカーの行為をずる賢いとみる人もいるだろうが、実際にはメーカーと外注先、ともに生き残っていくための、うまい落としどころではある。製造ミスはほとんどの場合、悪意を持って行われるわけではなく、単純ミスに起因する。

 それらが頻繁に起こるならまだしも、偶発的に発生しただけであり、なおかつ外注先も潔くミスを認めているのであれば、メーカーも外注先に対して貸しを作っておく方が、何かとプラスというわけだ。ただし金銭面では妥協をする余地はなく、きっちり値引きはしてね、というわけだ。

パッケージ表記ミスを気にしない「雑」な業界?

 なお今回のビールのようなパッケージの表示ミスは、PCの周辺機器やアクセサリー業界では、仮に起こってもほとんど問題にならない。「iphone」など固有名詞の誤記を長年放ったらかしにしているメーカーもあったりと、よくも悪くも「雑」で、ユーザー側も鈍感だ。プリンタの印刷コスト表示のように、業界内でガイドラインが定められた表示項目もあるにはあるが、その他はほぼメーカー任せだ。

 どうしても許容できないミスがあった場合も、大抵は紙パッケージ故に、上から訂正シールを貼り付けて済ませてしまう。もともとPCの周辺機器やアクセサリー自体、本体の新モデルが登場すれば対応の有無がガラリと変わり、その度にシールによる訂正を行っているので、こうした訂正はお手の物だ。

 また食品のように賞味期限があるわけでもないので、大慌てで対応しなくとも、メーカーがバイトを雇って店頭在庫にシールを貼らせて回ったり、あるいはいったん回収して倉庫側で入れ替えたりといった、日数がかかる対応でも何ら問題ない。パッケージ誤記による発売「延期」はあっても「中止」は、間違っても起こり得ないといっていいだろう。

著者:牧ノブユキ(Nobuyuki Maki)

IT機器メーカー、販売店勤務を経てコンサルへ。Googleトレンドを眺めていると1日が終わるのがもっぱらの悩み。無類のチョコミント好き。HPはこちら


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