そしてもうひとつ、外観から見抜きにくいパターンとして、振動による劣化が挙げられる。
例えば、スマートフォンをナビ代わりにバイクなどで固定して使っている場合、スマホには繰り返し振動が加わる。これによって内部の回路はガタガタになってしまい、見た目はマトモでも異常が発生する場合がある。最近ではAppleがバイクの振動が与えるiPhone内蔵カメラへの影響について注意喚起している。
これが水をかぶってしまっただとか、落として変形したといった、外部から見ればすぐに分かる異常ならばいざ知らず、細かな振動が繰り返しかかることで発生する不具合は、プロの目で見てもなかなか分からない。売りに出すユーザー自身、使い方に問題があることに気付いていない場合すらある。
もちろんメーカーも、開発段階でさまざまな耐久テストは行っているが、それは落下試験や耐熱テスト、さらにヒンジやボタンのような可動部にかかる耐久テストが中心で、こうしたイレギュラーな利用環境が長期間続くことを想定したテストまでは網羅できていない(MIL規格準拠をうたう一部製品など車両搭載を想定した耐振動テストが行われる場合もあるが、そうした製品はまれだ)。アクションカメラのように、もともと過酷な環境で使われる製品でなければなおさらだ。
プロが見ても分からない以上、ユーザー側が店頭でそれを見抜けるわけもなく、まんまと購入に至ってしまう。実際に使っていても明確に原因が分からないため、正常な製品に不具合が発生しているのではなく、もともと不安定な製品とみなされがちだ。特に持ち歩きが可能なデバイスはこうしたリスクは高い。
このようにPC周辺機器の中古品には、簡易なチェックでは見抜けないものの、実際には不具合が発生する直前だったり、本来のパフォーマンスを発揮できないレベルまで劣化が進行していたりするのに、そのまま流通している製品が数多くある。
もちろん、こうした中古品を扱っている業者の中には、高い専門性を持ち、こうした予兆を的確に見抜いて弾いているところも少なくない。メーカーの修理センターと違って、複数のメーカーの製品を扱うことから、メーカー以上の経験値を持っている事業者もあるほどだ。
しかしながら、あまり専門性が高くなく、PC周辺機器に限らず幅広い分野の製品を少しずつ扱っているような中古品販売業者は、前述のようなリスクを見抜くのは、経験値的にも困難だ。ユーザーもユーザーで、専門性の高い中古品販売業者だと問題を見抜かれてしまうことから、わざとこうした店に持ち込んでいる場合もある。
こうしたリスクがあることを身近に見聞きしているメーカー社員が、中古品に手を出さないのは、もはや必然といっていいだろう。一般のユーザーも、中古品を調達するにあたっては、こうしたリスクはしっかりと認識しておくべきだ。
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