100円ショップで売られているPCやスマホのアクセサリー 安全性はどうなのか牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2021年10月31日 11時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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安全性は重視しつつも品質には無頓着?

 ただし100円ショップは、こうした安全性が担保されている一方、品質に関しては無頓着だ。安価な素材を使ったり、工作のプロセスを省いたりと、あの手この手で原価を下げようとすることで、チープさが漂う品質になっていく。もちろん品質が高いのに越したことはないが、原価を下げるというミッションの前には、優先順位は著しく低くなる。

 特にPC関連のアクセサリーによくあるのが、過去に大量に出荷された専業メーカーの製品の金型を買い取り、それを使って追加生産した品だ。これらは摩耗した金型を使うのでパーツのかみ合わせが悪かったり、本来は梨地であるはずの表面がツルツルだったりと、難があることが多い。

 しかし、いかんせん過去に大量に出荷されており、支障なく動くことだけは保証されている。しかもタダ同然で放出された金型を使うので安く仕上げられる。「安全性を担保しつつ安く売る」には最適というわけだ。

 もうひとつ、最近増えているのは、専業メーカーの製品をまねて作られた製品だ。専業メーカーが販売している製品を入手、分析し、徹底的にコストダウンを行った上で作られることから、形状や機能はそっくりながら、とにかく安価なことが特徴だ。もちろんパクリにはならないよう、意匠的な問題には配慮されている。

 これらはオリジナルと見比べればチープさは一目瞭然なのだが、いかんせん同じ売場で横に並ぶことはないため、ユーザーからすると「欲しかったアレが100円で売られている」ということになり、爆発的に売れる。また売れ筋製品だけをターゲットにして作られるので、専業メーカーのラインアップのように売場を占有していながらまるで回転しない製品もほぼなく、売る側にとっても効率的だ。

 もっとも最近は、見るからにチープな製品は影を潜めつつある。その一方で、例えばスマホ用のガラスフィルムであれば、割れたときにガラスの破片が飛び散りやすいなど、使い終わる段階になって初めて、上位の製品との差が分かるものもある。割れることがなければ全く問題なく使えてしまうため、普通は気が付かないというわけだ。

 また最近は、多くの100円ショップが、100円という価格にこだわらず、200円や300円、500円といった高価格帯のラインアップを展開しており、100円では難しい製品であっても、販売できる土壌が整っている。こうした背景もあって、かつて品質が低いといわれた100円ショップの製品は、クオリティーが底上げされつつあるのが現状だ。

品質の高い製品を見つけるためには?

 こうした、見た目はマトモだが落とし穴がどこかにある製品を避けるためには、専業メーカーの製品を買えばいい──といいたいところだが、事情はそう簡単ではない。専業メーカーの製品であっても、実売価格は100円ショップよりケタ違いに高価だが、原価ベースでは100円ショップの製品と大して変わらないこともある。

 専業メーカーの製品で、本当の意味で品質の高い品を見つけたければ、パッケージが高級であることに着目するのも手だ。というのも一般的に、製品のパッケージにかけるコストは製品そのものにかける開発コストと比例しているからだ。

 最近は環境配慮などの理由で、高品質な製品でもパッケージを簡素化するものもみられるが、基本的には高品質な製品ほどパッケージにもこだわっている。逆に、パッケージにだけコストをかけて製品は手を抜くことはまずなく、よって「パッケージの出来がよい製品は、製品そのものも相応の開発コストをかけて作られている」という図式が成り立つ。

 あらゆる部分でコストダウンを行っている100円ショップの製品では残念ながらこの見分け方は通用しないが、専業メーカーの製品であれば通用するので(もちろん開発コストがかかっているだけの残念な製品もなくはない)、パッケージが手に取れる家電量販店などに足を運んだときは、ぜひチェックしてみてほしい。

著者:牧ノブユキ(Nobuyuki Maki)

IT機器メーカー、販売店勤務を経てコンサルへ。Googleトレンドを眺めていると1日が終わるのがもっぱらの悩み。無類のチョコミント好き。HPはこちら


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