値段がネックとなって購入をためらっているPC周辺機器をしばらくウォッチしていると、ある日突然、実売価格がガクンと下がることがある。大喜びで飛び付きたくなるものだが、ちょっと待ってほしい。
なぜなら、こうした突発的な値下げには、飛び付いてよい値下げと、しばらく待ってじっくり見極めるべき値下げの2種類があるからだ。それらはどのような理由によるものだろうか。また見分け方はあるのだろうか。今回はこうした、値引きの裏事情についてみていこう。
PC周辺機器は進化が激しいことから、モデルチェンジも頻繁に行われ、同一製品の価格は時間がたつにつれて相対的に下がっていく。メモリやHDD、グラフィックスカードのように、一時的に値上がりする製品もあるが、それらは供給の関係によるもので、長期的に見ると下降線を描いているものだ。
つまり待ってさえいれば、PC周辺機器の価格は下がるものなのだが、同じ「下がる」でも、好ましい下がり方と、そうでない下がり方とがある。前者であれば買い時だし、後者は製品そのものの価値を疑った方がよい。言い方を変えると、価格の下がり方をみれば、その製品が「当たり」なのか「外れ」なのかが分かることがあるのだ。
「ただ価格が下がっただけで、そんなことが見分けられるわけがない」「少なくとも素人には無理なはず」と決めつけてかかる人もいるかもしれないが、そんなことはない。手っ取り早いのは、あるタイミングで行われた値下げが「特定の販売店でのみ行われた」か、それとも「多くの販売店で一斉に値下げされた」かを確認することだ。
多くの販売店でほぼ同時に値下げが行われたのであれば、それはメーカーから何らかの指示があったことを意味する。どの販売店にも均等に販売の機会を与えて、後から「不平等だ」などとクレームが入らないようにするわけだ。もちろん、在庫に対する補填(ほてん)は後から入る。
これは一見すると健全なようだが、中には何らかの事情があることも多い。具体的には、その製品が潜在的な不具合を抱えており、後継製品の投入前に、価格を引き下げて在庫を一掃しようとしているケースだ。回収をするほどの不具合ではないが、後継製品と比較されると見劣りするという場合に、よく使われる手である。
また不具合はなくとも、後継製品の方が機能・性能・価格などの点において明らかに勝っており、それらの発表後は現行製品が売れなくなると見込まれる場合に、同様にメーカー主導で値引きが行われることがある。どちらの場合も、市場在庫だけでなく、メーカーの倉庫にある在庫まで全部なくす必要があるため、販売店からしても「えっ、いままでの価格は何だったの?」と驚くほどの値引きが行われることがある。
この2つのケースでは、安くなったからといって飛び付くと、後悔することになるのは明白だ。前者の場合は、使っているうちに不具合が出てくる可能性があるし、後者の場合は購入後それほど時間がたたないうちに魅力的な後継製品が出てきて「明らかに後継製品の方がいいじゃん、ハメられた!」と地団駄(じだんだ)を踏むことになるからだ。
一方、数ある販売店の中で、特定の店舗だけが値下げを行っているケースは、こうした心配はあまりない。販売店が自腹を切ってセールの目玉にしているか、あるいはメーカーと交渉して特価品を仕入れたかは分からないが、製品に問題があってメーカーが処分を急いでいるのであれば、1つの販売店だけで値段を下げるのは合理的ではないからだ。台数限定のセールも、同じ理由でリスクは低いとみてよい。
こうしたことから、価格比較サイトにある価格推移グラフを見るときも、最安価格がガクンと下がった場合、複数の取扱店舗で一斉に下がったのか、それとも特定の店舗でだけ下がったのかを見るクセを付けた方がよい。
もちろん上記に述べた理由以外に、競合メーカーの製品に対抗するための一斉値下げのように、リスクが低いケースもある。ただしその場合もしばらく待っていれば、一斉に値下げした横並び状態の販売店の中から自分たちだけが抜け出そうと、さらなる値下げを行う販売店が出てきがちなので、ひとまず待った方が得策だ。
そもそも複数の販売店が同時に値下げしたのであれば、最安値クラスの販売店は複数存在することになる。そのうちどこかの販売店で売り切れても、次点にあたる販売店との価格差はあまりないので、慌てて買いに走る必要はない。
話をまとめると、価格が下がったときに飛び付くべきなのは「特定の販売店だけが値下げをしている」場合、ということだ。さらに「台数限定」という条件が付くようであれば、売り切れる可能性があるので、急ぐ必然性は高い。そうでないケースは、いったん深呼吸して、一晩寝てからじっくり考えるくらいの方がよい。
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