家電量販店の近くに別の量販店がオープン おトクな商品を見つけてゲットするには?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2022年05月19日 11時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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 これまで地元で長らく愛されてきた家電量販店の隣に、ある日いきなり別系列の家電量販店がオープンすることがある。近年はかつてに比べるとどの量販店も出店ペースは鈍化しているが、2000年代までは全国各所でこうしたライバル同士の「一騎打ち」の光景が見られたものだ。

 このようなとき、新しくできた量販店は、セール品は確かに安いものの、それ以外の定番品に関しては、もう一方の量販店と驚くほど価格がそっくりだったりする。先行するライバルを研究してさぞかし安くしているだろう……と思いきや、全くの横並びで拍子抜けするほどだ。なぜこのようなことが起こるのだろうか。

同じ商圏にあるライバル店舗の成功は自店舗の死につながる

 メーカーや卸の営業マンにとって、家電量販店が複数林立するエリアというのは、なるべく担当になりたくないものだ。なぜならどちらの量販店の顔も立てなくてはならず、通常の営業活動以上に非常に神経を使うからだ。

 すぐ近隣にライバル店舗があるというのは、どのような業種でも起こり得る話だが、買い替えのサイクルが早い業種であれば、そう問題になることはない。例えば食料品を扱っているスーパーが横に2つ並んでいたとして、同じ客がある日は店舗A、翌日は隣の店舗Bで買っても、また明日取り返せばいいということになる。

 もちろん長期的には囲い込みの工夫は必要だろうが、それよりもチラシ商材をアピールするなどして、次の機会に客を引っ張り込むことに注力するのが一般的だ。しかしこれが家電量販店の場合、製品の買い替えサイクルが数年スパンと長いため、次の機会まで手をこまねいているわけにはいかない。今回買ってもらわなければアウトなわけである。

 また家電量販店は、ポイント制度による囲い込みが発達しているせいで、一方の家電量販店についた固定客は、もう一方の家電量販店で買い物をすることは著しく減少する。そもそもの問題として、いま家電量販店の店舗はネット通販の台頭もあって経営が青息吐息であり、同じ商圏にあるライバル店舗の成功は自らの店舗の閉店につながりかねない。それ故、生き馬の目を抜く争いが繰り広げられるというわけだ。

量販店の争いに巻き込まれたくないメーカー営業マンの対策

 こうした状況下で、自らの店舗に出入りしているメーカーの営業マンが、近隣にあるライバル店舗にも出入りしているとなると、家電量販店の店員にとっては、どうしても神経質にならざるを得ない。どちらも相手の動向が気になるので、あの手この手で営業マンから情報を聞き出そうとする。

 メーカーの営業マンとしては、立場上どちらの顔も立てなくてはならないため、うかつに相手の情報を話すわけにいかない。最近はセール商材の提供は本部のバイヤー側で行うため、店舗側の裁量で大掛かりな施策ができることは少ないが、ライバル店に魅力的な商材を提供していることがどこかから漏れ伝わっていて、嫌みを言われたり、無視されたりといったこともしばしば起こる。

 こうしたトラブルを避けるため、メーカー社内で営業マンの担当を決める場合は、近隣の量販店は別の営業マンを割り当てるのが一般的だ。エリア的には1人の営業マンが面倒を見た方が効率的だが、相手の量販店をひいきしているのではとの誤解を与えやすい。担当自体を別の営業マンに分けてしまえば、店舗から難癖を付けられるにしても風当たりは弱くなる。

 ただこれは、同一エリアで複数の営業マンを抱える大手メーカーでしか成立しない話で、都道府県単位でしか営業マンを配置できない小規模メーカーでは難しい。そうしたケースでは、営業マンはトラブルを恐れてどちらの店舗にも徐々に足を運ばなくなる。やむを得ず訪問する場合は、相手の量販店に見つからないよう、社名が大きく書かれた営業車ではなくわざわざマイカーを使うケースもあるほどだ。

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