日本政府が最大465億円の助成を行うマイクロンメモリ ジャパンの広島工場に行ってみた(1/2 ページ)

» 2022年11月21日 11時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]

 米Micron Technologyは11月16日、1β DRAMの量産製造開始セレモニーをマイクロンメモリ ジャパン(旧エルピーダメモリ)の広島工場で実施した。

 Micron Technologyの日本法人としては、最先端メモリ製品の販売およびマーケティングを行うマイクロン ジャパン(高橋康代表取締役社長)と、最先端メモリ製品の開発や設計、生産を担うマイクロンメモリ ジャパン(ジョシュア・リー代表取締役/小野寺忠代表取締役)があり、今回は後者の広島工場/広島開発センター(広島県東広島市)を訪れた。

Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 広島県東広島市にあるマイクロンメモリ ジャパンの広島工場。MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(広島市民球場)約9個分の広さがあり、主にDRAM(DDR3/4/5、GDDR5/6/6X、LPDDR2/3/4/5/5X、HBM2e)の製造を担う
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 広島工場の位置付け。ダイバーシティーを重視し、地域のボランティア活動にも積極的に参加しているという

1βノードDRAMの量産体制が整い市場のリーダーシップを確立

 Micron Technologyは11月1日に、1βノードDRAMの量産体制が整ったこと、スマートフォンメーカーとチップセット製造パートナー向けに、業界初となる1β(1ベータ)DRAM(LPDDR5X)テクノロジーの認定サンプルを出荷開始したと発表済みだ。同プロセスでの量産は日本で開始し、次は台湾で行うとしている。

 1β DRAM1ダイあたりの容量は16Gbit、データ転送速度は8.5Gbpsで、従来の1αプロセス比で消費電力は最大15%削減でき、メモリ密度は35%以上向上したという。同社は業界に先立って176層のNANDや232層のNAND、1αプロセスのDRAMといった技術を投入してきたが、この1βプロセスは新たなマイルストーンだとした。

Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 量産製造が始まったLPDDR5Xメモリ
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 1βプロセスで製造されたLPDDR5Xの主なスペック
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 1βプロセスで製造されたDRAMのウェハー
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 最新の1βプロセスで製造された16GbのLPDDR5X
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 DRAMとNANDの双方で、いち早く最新技術を取り入れて市場に投入してきたとアピール

 台湾やシンガポール、米国(マナサス)にも生産拠点はあるが、「広島は開発拠点と生産工場が一緒にあるのがユニークで、開発から出荷までスピーディーに行えるリーディングエッジの製品を市場にいち早く提供できるのが特徴だ」(マイクロンメモリ ジャパン Fab15 広島工場 アドバンストテクノロジー部門 シニアディレクター 野坂耕太氏)という。

 このLPDDR5XのDRAMは、2023年に市場に投入されるスマホに搭載予定だという。今後は、PCなどのクライアント機器や産業機器、データセンターなど幅広い分野で1βプロセスでの製造を行っていく予定だ。

 モバイルデバイスにおいて、写真やビデオなどのデータが日常的に増えており、一方でAIや自動車分野でも多くのデータが生み出されており、これらの拡大するデータのニーズに応えていく必要があるとした。

Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 世界各地に製造拠点と研究開発施設がある
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 さまざまな市場に向けてメモリを開発&製造しており、1β DRAMはこれまで以上に幅広い需要に対応できるという
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 現時点ではモバイル向けを量産しているが、クライアントやエッジ、データセンターなど全てのポートフォリオに対応できるDRAMを市場に提供していく
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 温室効果ガスの排出量を削減したり、再生可能エネルギーの利用率を向上させたりなど、環境保護の取り組みも積極的に行っているとした
Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 女性や少数のグループの人数を増やしたり、賃金や福利厚生を平等にしたりと、ダイバーシティーとインクルージョンに配慮した職場環境作りをしており、人材育成にも力を入れているという

 業界では微細化に向けてEUV露光(極端紫外線露光)への移行が進行中だが、同社ではコストパフォーマンスが高い独自のマルチパターニングの液浸リソグラフィー技術を継続する。

 EUV露光は、2024年以降の立ち上げを見込んでいる1βの次の「1γ」世代で導入予定だが、日本政府やサプライヤーに働きかけを行っているとのことだ(Micron Technology 首席副社長 グローバルオペレーション担当 マニッシュ・バーティア氏)。

Micron Technology マイクロンメモリ ジャパン 広島工場 Micron Technology 首席副社長 グローバルオペレーション担当 マニッシュ・バーティア(Manish Bhatia)氏

 続いて、工場内部の模様を見ていこう。

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