―― SHARP Tech-Dayの展示の見どころを教えてください。
種谷氏 展示エリアは「Smart Living」「Smart Industry」「Smart Cities」「Sustainability」の4つで構成します。
1つめのSmart Livingでは「Less is More」を打ち出し、AIを活用することで家庭内のいろいろな悩みを減らし、暮らしをより豊かに、快適にする技術を体験できる提案を行うことになります。
身に着けることができるAIスピーカー「サウンドパートナー」を利用して、音声だけで家電製品をコントロールしたり、キッチンや外出先、ビジネスシーンでのエッジAIの提案を行ったりします。また、エッジAIを搭載したバーチャル説明員による「AIアバター」や、低騒音化でハイパワーを出せるヘアドライヤー、独自の加熱技術と熱源の最適制御が調理時間を大幅に短縮する高速オーブンなども展示します。
Smart Industryでは、「Better Efficiency」の切り口からRX(Robtics Transformation)によって多様な働き方を賢く支援し、迅速に効率的な産業への貢献を提案します。AIを活用して匂いをかぎ分ける匂いセンサーの「NIOI Vision」や、XR技術を用いて言語やアイデアなどさまざまな情報を可視化する技術、屋外ARグラス用途を想定した高輝度で、小型、高精細のマイクロLEDディスプレイ「Silicon Display」、物流倉庫における収容力向上、業務効率化、柔軟なオペレーションを実現する「ロボットストレージシステム」などを展示します。
Smart Citiesでは「Better Safety」をテーマに、AIによる運転制御や災害発生時に役立つ技術など、生活に安心と安全をもたらす技術を体験することができます。通信型ドライブレコーダーで収集した走行時のデータから、AIが運転の改善点について指導するAI運転改善指導ソリューションや、フロントスピーカーだけで立体音響を実現する「OPSODISの応用展開」、システム一式をキャリーバックに内蔵し、どこでも簡単にローカル5G環境を実現する可搬型ローカル5Gシステム「Instant 5G Network−災害監視システム」、洗濯後の水を浄化、再利用し、限られた水資源でも繰り返し洗濯ができる「極節水洗濯システム」などを展示します。
Sustainabilityは「Greener Energy」として、未来の再生エネルギーの創出や電力効率の向上により、環境問題に取り組む技術を実感できるエリアとなります。薄型軽量を特徴としたペロブスカイト太陽電池モジュールや、化合物多接合型太陽電池を使用し、宇宙用途に適合した高効率/軽量/フレキシブルモジュールの「宇宙用ソーラーシート」、独自の反射構造により、屋外光を光源とする「低消費電力反射型LCDサイネージ」などを展示します。
―― 展示したそれぞれの技術に関して、事業化の目標などは設定しているのですか。
種谷氏 これは技術そのものや、その技術が活用される領域で大きく異なります。Sustainabilityのような領域では、長期間の取り組みの中で事業化していくものが多いと考えられますし、Smart Livingの領域では、AIの変化を捉えながら短期間で事業化する必要があるでしょう。
―― シャープの呉柏勲(ロバート・ウー)社長兼CEOは、早川徳次氏が持っていた創業者精神を社員にも持ってほしいと発言していますし、シャープの親会社である鴻海科技集団の劉揚偉会長は、2023年7月に来日し、シャープ本社に3日間滞在した際に、「シャープの未来を描いたときに真っ先に頭に浮かんだのがテクノロジーであり、社内には魅力あるテクノロジーが多数あると感じた」とコメントしました。経営トップが、技術にコミットしていることを感じます。
種谷氏 技術がなくなると、シャープではなくなるというのは、経営トップに共通した認識です。劉揚偉会長は自らが技術者であり、半導体分野の専門家でもあります。当社に対する理解が深く、その立場から技術を重視する姿勢を示しているのは明らかです。
実は当社の歴代社長は、言葉こそ違えど、独自の技術を使っていかにゲームチェンジするかということを言い続けてきました。「他社がまねするような商品を作れ」「需要を創造しろ」「ユーザー目線にあった独自商品を作れ」「オンリーワン商品の創出」といったように、共通しているのはまさに独自技術で差別化し、他社がやらない半歩先の商品を作り、自ら需要を創出し、新たな事業を生み出すゲームチェンジャーになるという姿勢です。
もちろん、失敗することもあります。しかし、こうした言葉からも技術を重視し、常に挑戦する姿勢がシャープのベースにあることが裏づけられると思います。
2022年度は大幅な最終赤字となりましたが、反転攻勢する上で、起点となるのが技術であり、それを示すのがSharp Tech-Dayとなります。
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