2023年9月に創業111周年を迎えたシャープが、1が並ぶ11月11日を中心にした3日間、「SHARP Tech-Day」(11月10〜12日/東京ビッグサイト 東8ホール)を開催する。自社開催の技術展示会は創業以来初だという。
シャープ独自のエッジAI「CE-LLM」を始めとして、初公開のものをメインに、数多くの技術を展示。全体で40の技術テーマを披露し、未来に向けた提案を行う。
同社 常務執行役員 CTO兼R&D担当の種谷元隆氏は、「創業以来、当社の原動力は技術である。エンドユーザーにもシャープの将来の可能性を感じてもらいたい」と語る。種谷CTOに、同社の歴史を技術の観点から振り返ってもらうとともに、SHARP Tech-Day開催の狙いについて聞いた。
―― シャープが、技術展示会である「SHARP Tech-Day」を開催する狙いは何でしょうか。
種谷氏 当社は1912年の創業以来、社会から必要とされるものを技術で実現し、価値を生み出してきました。当社は技術の会社であり、技術に根ざした独自性が、これまでの111年間を支えてきたといっても過言ではありません。コロナ禍ではリアルイベントが開催しにくい状況にありましたが、そこからようやく脱却し、シャープとしても反転攻勢に打って出るというタイミングに入ってきています。
まずは技術で「のろし」を上げ、新たな技術が新たな価値を作るということをメッセージとして伝え、“シャープが元気である”ということを伝える場にしたいと考えています。
―― シャープの技術が、外に向けて発信できていないという危機感もあったのですが。
種谷氏 そこまでの危機感があったわけではありません。ただ、コロナ禍では、コミュニケーションが不足しがちであったり、他社との協業が積極化しにくかったりという部分はありましたから、結果として、それが閉塞感につながっていたともいえます。
自分たちの技術には自信があっても、外とつながればそれを広げる可能性がもっとあるはずだという気持ちはありました。こういった機会損失のリスクは可視化しにくく、それに気がつけていなかったのではないか、やっているつもりになっていたのではないか、という点では危機感があります。
―― 「SHARP Tech-Day」では、「Be a Game Changer」をテーマに打ち出しています。この意図はどんなところにありますか。
種谷氏 商品開発は、ちょっと油断すると、改善の域を出ないままで終わったしまうことになりがちです。例えば、省エネという観点で見ても、仮に100Wで動作するものを2023年は90Wにすれば、それで新たな商品として価値を提供することはできます。これを2024年には80Wにすれば、さらに価値が上がります。
しかし、それは大きな価値といえるものではありませんし、当社にしかできないものともいえません。当社がなぜ社会に存在するのか、という意義に立ち返り、そこで何をしなくてはいけないのかということを考えた場合、それは毎年、改善を加えて消費電力を引き下げることではなく、これまでの延長線上にはない新たな価値を生み出し、競争軸を変えるようなものでなくてはいけないと思っています。
当社よりも規模の大きな会社はたくさんありますし、当社の規模の会社がゲームチェンジを起こすには、自分たちにしかできない技術が必要になります。それを見せるという意味を込めて、「Be a Game Changer」をテーマにしました。
―― シャープの創業者である早川徳次氏は、「他社がまねするような商品を作れ」と語り、これがシャープのDNAであると言われています。
種谷氏 当社には創業以来、ゲームチェンジをしてきた技術が数多くあります。他社がまねするような商品を作りたいという気持ちを持った人たちが、そうした企業姿勢に引れて集まってきたからこそ、シャープという会社が成り立っているのではないでしょうか。私を含めて当社には、変化を好む人たちが多い(笑)。だからこそ、創業以来のDNAが継承されてきたといえます。
実は今回のSHARP Tech-Dayでは、就活生などを対象に当社の社員との交流が行える「HRエリア」を用意します。当社の技術展示を見て、当社と対話をしてもらうことで当社のDNAに共感してもらい、チャレンジしたい、変化を起こしたい、変わったことをしてみたいと思い、当社に入りたいと思ってもらえるきっかけを作りたいですね。
ですから、当社に少しでも興味を持っている人たちには、ぜひSHARP Tech-Dayに足を運んでもらいたいと思っています。SHARP Tech-Dayに参加して、自分が活躍する姿を描いてもらえるといいですね。
当社の場合、商品という形になったときに外に向けて発信することはあっても、技術を外に発信することが少なく、必要なものは自分たちの情報の中から探しにいくということが多い状況でした。
しかしSHARP Tech-Dayでは、あくまでも「発信」側に徹します。積極的に自分たちの技術を伝えて、それを見ていただくことで、より可能性を広げるための提案をいただきたいと思っています。また、世の中の激しい濁流の中でも、当社が持つ技術を伸ばすことができるのかといったことを知り、成長の可能性を模索してヒントを得ることができれば、さらに開発を加速できると思っています。
今回は40の技術テーマで展示を行いますが、そのほとんどが初めて公開するものになります。中には、CEATEC 2023でお見せした屋内光発電デバイス「LC-LH」や電子ポスターとして利用できる「ePaper」、ネイチャーテクノロジーを生かしたヒーリングファン「はねやすめ」なども展示しますが、公開済みのものは1割程度で、約9割が新たな展示だと思ってください。
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