日本におけるロボット掃除機の世帯普及率は、調査にもよるが10〜15%程度だとされている。一方、米国では35〜40%程度と(日本から見ると)思った以上に普及している。この差はどこから生まれるのだろうか?
フェルナンデズ氏は、日米におけるロボット掃除機の普及率の差は住環境の違いが大きく影響していると指摘する。
米国ではペットを飼っている世帯が80%程度で、約半数が平屋建ての家屋に住んでいる。「Roombaにピッタリな環境」が多いのだ。一方、日本では集合住宅(アパートやマンション)に居住する人の割合が高いとされ、ゆえにペットを飼えないケースも珍しくない。米国とは逆に、Roomba(ロボット掃除機)のメリットを生かしづらい環境ともいえる。
ただ、日本におけるロボット掃除機の普及率が低い原因は、環境面の制約だけではない。日本人の“気質”も関わっている可能性がある。
今回の調査では、ロボット掃除機の導入(買い換え)検討から購入に至るまでの期間を尋ねたという。すると米国の回答者は半数弱(49%)が「1週間以内」と答えたのに対して、日本の回答者で1週間以内と答えたのは約2割(23.5%)にとどまった。高価な買い物ということもあってか、日本人はロボット掃除機の検討/購入を慎重に進めるのだ。
加えて、米国人と比べて日本人はロボット掃除機の機能に対する評価が厳しい傾向なのだという。「掃除のクオリティー(品質)」「使い勝手」「機能の充実」の3点について満足度を聞いたところ、日本人の方が有意に「不満」と答える比率が高かった。倍率にすると、米国人の約2.5〜5倍の“不満”を抱えている計算となる。
日本人が製品に対してシビアな目を向けるのは、他ジャンルの製品にも共通する傾向にある。多くの国/地域において「これで十分」となっても、日本では「これではダメ」となってしまう可能性があるのだ。
一方で、日本人は面倒を嫌う傾向にもある。
床の水拭き掃除について面倒かどうか聞いた所、米国では約半数(48.5%)が面倒と答えたのに対して、日本人はその割合が4分の3近く(74%)まだ上がる。なのに、日本では水拭き機能を備えるロボット掃除機(2in1ロボット掃除機)を使っている割合がわずか1割ほど(11.7%)だ。
挽野社長は、この現状は「(日本人が)2in1ロボット掃除機を認知していないからではないか?」と分析する。
日本人はロボット掃除機のメンテナンスも面倒に感じる傾向にあるという。メンテナンス頻度も米国人と比べると有意に低く、特に「したことがない」という回答比率はずばぬけて高い。
もしかすると、このメンテナンスの面倒さが、日本人のロボット掃除機に対する満足度の“低さ”につながっているのかもしれない。
今回投入したRoomba新モデルは、これらの調査で示された「日本市場の状況」を踏まえて投入される。特にRoomba Combo 10Max ロボット+AutoEmpty 充電ステーションは、ハイエンド(多機能)志向の日本市場において、より広いユーザーに訴求すべく企画されたそうだ。
昨今、日本ではハイエンドモデルを中心にロボット掃除機の市場が盛り上がっている。特に、中国メーカーの攻勢は特に強い。ロボット掃除機の草分け的存在であるアイロボットも、現在は激しい競争の中に身を投じている。
モップの自動洗浄機能など、Roombaの新モデルは自身に“足りない”部分を補うことで魅力を高めた。しかし、ライバルも機能面で切磋琢磨(せっさたくま)してくるだろう。
ロボット掃除機の競争は、どこまでいくのか。目が離せない。
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