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エプソンダイレクトのデスクトップPCを一手に担う「ちくま精機」 訪ねて分かった1日修理や短納期を実現する“秘密”(5/5 ページ)

» 2024年12月17日 17時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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資本的つながりのない両社が緊密な連携を行える理由は?

 ちくま精機では「生産」と「修理」を近傍で行っている。生産工程と修理工程で素早くに情報を共有できるため、修理工程で得られた情報をもとに、生産工程の改善につなげるといった水平展開を図りやすい。

 エプソンダイレクトでは、法人ユーザーのPC利用状況を実地で確認した上でカスタマイズを提案したり、法人ユーザーの要望を生産現場で実現(反映)させたりという活動を行っていることも見逃せない。

 今回、筆者は取材でちくま精機を訪れ見学したが、エプソンダイレクト製PCの導入を検討している法人も、希望すればちくま精機の生産/修理工程を見学可能だ。

 ……と、ここまで密接な関係を持つエプソンダイレクトとちくま精機だが、両社には資本関係がない。両社は1994年1月から関係が30年間続いているのだが、取材を通して「資本関係がない両社が、なぜ長年にわたり緊密な関係を維持し続けられるのか?」という疑問が沸いてきた。

 その疑問を両社にぶつけると、異口同音に「(資本関係のない)別企業であるからこそ、緊張感を持った関係を構築できる」と答えた。

今回の取材に対応してくださった皆さん 今回の取材で対応してくださった4人。左から、エプソンダイレクトの原田寿郎氏(CS品質管理部 部長)、エプソンダイレクトの大輪秀俊氏(技術部 生産技術グループ 課長)、ちくま精機の吉沢浩二氏(製造部門PCグループ チームリーダー)、同社の藤森克彦氏(製造部門 統括マネージャー)

 エプソンダイレクトは、ちくま精機に対して定期的に工程監査を実施し、問題があればそれを改善するように申し入れを行い、生産ラインの改善/進化につなげている取り組みを長年に渡って繰り返している。また、定例会議を毎月行い、その中で課題を解決するといった活動も進めている。

 工程の進化や品質の改善において、新たなテクノロジーも採用している。エプソンダイレクトは長野県塩尻市、ちくま精機は同県安曇野市に本社を構えており、物理的な距離は比較的近い。それでも、さらに“距離”を縮めるために、セイコーエプソンのスマートグラス「MOVERIO(モベリオ)」を用いて、生産現場の情報を共有するといったことにも挑戦しているという。

 また2024年度から、エプソンダイレクトの新入社員がちくま精機の生産ラインで3週間の製造実習を実施する取り組みを開始した。製造現場を理解し、そこで得た経験を日常の業務に生かすことが狙いだ。

 製造部門だけでなく、修理部門でも連携を強化している。エプソンダイレクトのサービスセンターが行う訪問修理では、修理に最適な部品の選定において、ちくま精機が持つ修理ノウハウを活用している。また最近では、現地での修理中に問題が生じた場合に、ちくま精機の担当者からオンラインを通して遠隔サポートを受ける取り組みも行っている。

 新たな技術が登場し、PCの活用方法が変化する中、モノ作りを通じて社会課題の解決に貢献するという基本姿勢は両社に共通する。このような相互協力体制はお互いの方向性が“一本化”されているからこそ行えると両社は強調する。

 緊密でありながら、緊張感を持った関係――これが、エプソンダイレクトのPCの「品質と短納期の両立」「短期間修理」を実現しているといっていい。

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