それでは、本題のキーボードについて見ていこう。第10世代iPadはSmart Connectorを備えていないので、本製品の接続方法はSmart Connectorではなく、Bluetoothとなる。
キーは日本語JIS配列を採用する。キーは6段あり、最上段にはマルチメディアキーが用意される他、左端にはEscキーも用意されているので、漢字の変換候補をEscキーで取り消すなど、Windowsのキー操作のクセが付いている場合も使いやすい。ちなみに、キートップに印字されているのはアルファベットのみで、かなは印字されていない。
キーピッチは実測17mmで、ロジクール製品のように主要キーのピッチを優先して利用頻度の低いキーのピッチを詰めたり、配列まで変えてしまったりするのではなく、それらを維持したまま全体的にキーピッチを狭くする仕様で、方向性の違いが如実に出ている部分だ。やや狭めなのが気になる人もいるだろうが、個人的には評価したい。
本製品で問題なのは、こうしたキー配列よりもキーストロークの深さだ。本製品のキーストロークは約1.3mmあるのだが、しっかりと底につくまで押し下げないと認識されないため、Magic Keyboardと同じ感覚で入力すると、押したはずの母音や子音が認識されずにローマ字入力が不完全になることがある。ごくまれにではなく、10文字に1文字程度というそこそこの頻度で発生するので悩ましい。
これらの症状はゆっくりタイプすればやや抑えられるため、慣れ次第ではどうにかなる部分ではあるのだが、高速にキー入力できないのでは本製品の存在意義が失われてしまう。後述するトラックパッドの問題と併せて減点要因となる。
ロジクール製品にあって本製品にない機能として、バックライトが挙げられる。そのため薄暗い場所でもキー入力しやすいロジクール製品に対して、本製品は使う場所を選ぶ形になる。人によっては重要視するであろうポイントなので要注意だ。
トラックパッドについても、やや減点要因となる部分だ。面積が広いこと自体は評価できるのだが、クリック感が安っぽく、ポインターの位置をずらさずにクリックするのが非常に難しい。
またパームリジェクションがうまく作動していないのか、他のトラックパッド搭載キーボードと違ってテキストを入力し始めてもポインターが画面に表示されたままになり、タイプ中にポインターがあらぬところに飛ぶという現象が多発する。勝手に日本語変換が確定されてしまうこともあり、落ち着いて入力していられないというのが正直なところだ。
試した限り、「アクセシビリティ」→「ポインタコントロール」の「トラックパッドを無視」をオンにしたり、「一般」→「トラックパッド」の「ナチュラルなスクロール」をオフにしたりするといくらか改善は見られたが、Smart Connectorで接続するMagic Keyboardやロジクール製品ではこうした症状は発生しないので、本製品の気になる部分となる。
最後に充電回りを見ていこう。キーボード部の右側面には、電源ボタンとUSB Type-Cポートが用意されている。第10世代iPadは本体ポートもUSB Type-Cなので、USB Type-Cケーブルが1本あれば、iPad本体も本製品も充電できる。
電源ボタンはスライドスイッチで提供されており、使わない時はオフにしておける。本製品は一定時間未使用だと自動的にスリープになる機能も備えているが、この物理ボタンを使えばよりスピーディーに電源のオン/オフを行える。
以上ざっと見てきたが、そんな本製品の最大の強みは価格だ。実売1万4800円ということで、実売2万円半ばのロジクール製品と比べると大幅に安い。またApple純正のMagic Keyboard Folioは実売4万2800円と高価なだけでなく、側面が覆われておらず保護性能では疑問符がつくので、そうした点でも本製品の方が有利だ。
もっとも、本製品は前述のようにキーやトラックパッド回りの挙動に問題があり、積極的にはお勧めしづらいのも事実だ。コストパフォーマンスの優秀さにおいては本製品の右に出るものは少なく、またSmart Connector対応のキーボードと違って本体から分離させた状態でもタイプできることも用途によっては便利なだけに、非常に惜しい。現状では「価格相応」という評価にならざるを得ないだろう。
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