発表会では、挽野社長が2024年度の日本におけるアイロボットの取り組みについても説明した。
挽野社長は「2024年に日本における累計出荷台数は600万台を達成し、国内における(ロボット掃除機の)普及率を10%にまで高めることができた。『普及率10%』は2018年に打ち出した中期目標であった。日本の家庭において市民権を得ることができた」と胸を張る。
一方で、同社は2024年4月に「指定価格制度」を導入し、長期的に価値を提供できる販売基盤が整ったことに加え、ヤマダデンキでも販売を開始することで店頭での接客機会が大きく増加した。「他の量販店でも、販売現場でのタッチポイントの質が高まっている」という。
挽野社長は販売面について「特にエントリーモデルの販売が好調で、初めてロボット掃除機を購入するというユーザーや単身世帯、ヤングファミリー層に受け入れられている。ルンバは価格が高いとして敬遠していたユーザーにも、手が届く存在へと進化した実感がある」と語る。
また、2024年度の新たな取り組みとして、2024年11月から千葉県東金市において「ふるさと納税」の返礼品にルンバのリユース品が採用された、2カ月で1000台を超える申し込みがあったことを紹介。これは同市内にルンバの修理と整備を行う「アドレスサービス」の拠点があることから実現したという。
iRobotのコーエンCEOは、2024年5月に就任した。今回の発表会は、日本で初めて参加する記者会見でもあるという。
「CEOに就任した際、業績改善のためにありとあらゆるものをエレベート(向上)し、iRobotの成功に全力を注ぐことを決意した。私は再活性化するための手助けを必要とする企業やブランドで働くことに大きなパッションを持っている。また、それに関して多くの経験がある。革新的なブランドとして知られるiRobotは、大きな成長の可能性を秘めたグローバルブランドであり、マルチチャネルを持ち、知財ポートフォリオも持っている点が強みだ」と述べる。
またコーエンCEOは「CEOに就任してからの1年間で、(iRobotに)多くの変化を生み出した。ビジネスモデルを変え、ロボットの生産/開発方法を変え、新製品を迅速かつ効率的に市場投入すべく、アジアに所在するパートナーと手を組んだ。さらに経営陣を刷新し、新製品のイノベーション、消費者フォーカスの製品設計、ブランド構築に集中する最高の人材をそろえた。iRobotはものすごいスピードで動いている」と、この11カ月の変化について説明した。
加えて、コーエンCEOは「消費者に焦点を当てることにも力を注いだ。ロボット掃除機に求められている製品と技術を明確にし、全ての価格帯と機能レベルにおいて、喜んでもらえる“iRobot体験”を提供する。機敏で、市場投入スピードを重視した革新的企業となり、これによって、業績を回復させる」とした。
そんなコーエンCEOについて、挽野社長は「人の話を丁寧に聞く、オープンで懐の深いリーダーだ。経営者としてシャープで、社員や取引先、協力会社への配慮も優れている。iRobotブランドへの理解度が高く、その価値を直感的に理解している」と評した。
そんなiRobotだが、2025年3月12日(米国時間)に発表した2024年度業績において、負債の借り換えや企業売却の可能性など、さまざまな選択肢を視野に入れた取り組みを開始したことを明らかにした。それに伴い、同社の年次報告書(Form-10K)において「企業としての存続に課題がある」と指摘されることになった(参考リンク)。
本件に対して、コーエンCEOは「疑問や懸念、誤解を招くような一部報道があった」と前置きした上で、「財務基盤の強化策を講じており、事業戦略の見直しを行っているが、全てポジティブ(前向き)なアクションであり、主要な融資先と建設的な協議を継続している。そのプロセスにおいて、取締役会が(年次報告書で)企業継続に関する懸念の一文を加えた。iRobotの戦略的見直しプロセスの中で、この文言が修正されることを期待している」とした。
その上で、「新製品は、利益率が向上しており、収益成長に貢献する。新たな製品に投資し、顧客に投資し、販売店のための投資も継続している。また、次世代の新製品も開発中である。結果として、事業運営や製品開発、製造、サービス提供に直接的な影響を及ぼすことはない。通常通り業務を行っている。再建の基盤となるブランドもある。安心してほしい。iRobotは盤石である」と強調した。
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