4年ぶりの新作「ScanSnap iX2500」を試す 自炊ブームは去っても、その価値は健在か?(3/3 ページ)

» 2025年08月19日 12時00分 公開
[瓜生聖ITmedia]
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iX1400/iX1600ユーザーの不満と、それを解決するポイント

 では既にiX1400やiX1600を使っているユーザーにとって、iX2500はどのようなメリットがあるだろうか。まず、iX1400ユーザーであれば、最大の違いは無線LAN対応とタッチパネルだろう。iX1400はUSB接続専用/液晶なしのシンプルモデルだ。前述のiX500ユーザーと同じく複数のデバイスから利用できるメリットは大きいはずだ。

 一方、iX1600ユーザーにとってiX2500への買い替え動機はやや悩ましいかもしれない。iX1600はWi-Fi対応/4.3型タッチパネル搭載と、現在のiX2500の原形と位置付けられる機能を既に搭載していた。

 実際、今回のiX2500の発売に伴ってiX1600は販売終了となっており、販売戦略的に見てもiX2500はiX1600のリプレースモデルとなるわけだが、その変化は大きくはない。強いて言えば最大搭載枚数が50枚から100枚に倍増したことがもっとも大きく、スキャン速度は毎分40枚から45枚の12.5%の向上にとどまる。

 タッチパネルは4.3型から5型へ、ATMなどで利用されている感圧式からスマートフォンの静電容量式に変わったことで、スライド操作も操作しやすくなったという変化はあるものの、「だから買い換えるべきだ」と言うほどではない。

 Wi-Fi規格もiX1600が対応していたWi-Fi 5に加えてiX2500はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応しており、WPA3やTLS1.3対応と合わせて、オフィスの混雑した電波環境でも安定したセキュアな通信が可能になっている。

 スキャン画像の画質面でも、新たに業務用スキャナー譲りの「クリアイメージキャプチャ」技術を搭載し、従来より色ズレやモアレの発生を抑制、また、ドキュメントスキャナーでは発生することの多い縦筋の軽減機能もサポートしている。最高画質の向上というよりは平均点の底上げ、といった印象で、確実にうれしいポイントではあるものの、最近iX1600を購入したユーザーにとっては悩みどころかもしれない。

iX500ユーザーも納得の“確実な一歩”

 2010年前後の自炊ブームは、タブレット端末の普及と出版社の電子化出遅れのギャップが生んだ特殊な盛り上がりだったのかもしれない。「高性能化、大容量化、高精細化などによって端末で本を読む」ということが現実的になったが、電子書籍はまだまだ数が少ない――そんな時期に、多くの人がこぞって本を裁断してスキャンし、自ら電子書籍化した。

しかし、出版社側の電子書籍整備が進むと、紙の書籍は直接メモを書いたり、優れた一覧性を生かす目的のためだったりや、コレクターアイテムとして住み分けるようになった。現在において自炊はわざわざ購入した紙のメリットを手放す行為に等しく、そのニーズは大幅に減少している。

 だが、これはスキャナー需要が無くなったという意味ではない。むしろ現在では、より幅広い用途でスキャナーが活躍するようになった。自炊ブーム時代との違いは、「スキャナー=本をPDF化する道具」という限定的な位置付けから、「紙の情報を手軽にデジタル化して活用するための日常ツール」へと認識が変わったことにある。

 実際、最近ではChatGPTなどAIに紙資料の内容を読ませたいという要望もある。マルチモーダルなAIは既に画像を取り込む「目」を持っているが、「紙資料」を高精度でデータ化しなければ思った通りの成果は得づらい。スキャナーは単にアーカイブ目的だけでなく、アナログからデジタルトランスフォーメーション(DX)をつなぐ入り口として位置付けられてきている。

 そんな中で登場したiX2500は、型番の増加分ほどの派手さこそないものの、総じて言えばユーザー目線に徹底的に寄り添った、着実な進化を遂げた次世代スキャナーだ。

 往年のiX500ユーザーにとってはPCの周辺機器から独り立ちし、ScanSnap自身がPCにもスマートフォンにも、さらにはクラウドサービスにも直接やりとりできるようになったインテリジェンスを感じる大きな変化を果たした。iX1600からの堅実なブラッシュアップによる進化には、ドキュメントスキャナーの元祖でありながら、常にトップランナーであるScanSnapブランドの強み、安心感がある。

 また、iX2500には今後実装予定とされている機能がいくつかある。PCレスでのNASへの保存機能やChromeboo対応(2025年秋予定)、スキャンデータをデバイス間で同期するData Sync、スマートフォンを近づけることで自分の設定を一時的に反映させる機能などだ。

 このような製品発売後のアップデートはハード/ソフト/クラウドサービスの三位一体としてScanSnapが提供されていることの現れだともいえる。製品の良しあしはハードウェアだけでなく、サービス全体で捉えていく時代になってきたようだ。今後のサービスアップデートを享受するためにも、そろそろ最新機種に乗り換える時期なのかもしれない。実際、今回のレビュー執筆に際しては試用機を借用したが、その後、自費でiX2500を購入している。

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