柏口さんが、TalkMemorial.aiの効果で特に気を配っているのは、依頼者がAI故人に依存する状況を作り出すことだ。
「双方向サービスを作る上で、特に意識している部分です。依存状態を作って何年も契約してもらうようなサービスにはせず、急な死別からくる悲嘆を緩和して、ある程度のところまできたら自然と離れるような流れを意識しています」
双方向タイプはいずれも年間契約の形式を採用しており、当然契約更新は可能だ。しかし、1年が過ぎた後に契約を更新するケースは今のところないという。
PetMemory.aiでは、さらに踏み込んで「卒業」という要素を実装している。亡くなったペットのアバターにアクセスする頻度の変化やアクセス時の対応などをAIが総合的に勘案し、アバターから距離を置く頃合いだと判断されたら、アバターのペット側からの卒業を提案というものだ。
あくまで提案なので強制力はなく、卒業後に再開することもできる。ただ、距離を取る道筋を示すことに重きを置いている。
卒業機能をTalkMemorial.aiに実装するアイデアもあるが、柏口さんは「そこは様子を見てから」と考えている。いずれにしても、一生をかけてケアする時間軸ではなく、依頼者とは比較的短い期間の付き合いを想定している様子だ。
その距離感を可能にしているのは、単体で商業的に成立する必要性がない点が大きい。同社は収益の大半をBtoB向けのAIソリューションから得ており、TalkMemorial.aiを事業の柱に育てる構想は抱いていない。
「8割〜9割の人に批判されても、必要とする人がいるならAI故人サービスは提供すべきだと考えています。その上で、長期間利用される方が積み上がるような設計にしてはいけないなと。普通のサブスクサービスとは少し違った考えで提供しています」
2026年現在も新たなAI故人サービスは世界中で増えているが、中には故人の肖像権をないがしろにするようなものもある。プレスリリースに「故人に会えます」と臆面もなく書いてしまうような傲慢(ごうまん)にも思えるサービスも過去に何度か目にした。
今のところ、AI故人を生成したり関連サービスを提供したりすることへの業界的な倫理規定は存在しないので、今後もサービス提供側のスタンスによってモラルの輪郭は大いに揺らぐだろう。だからこそ、利用者には個別に判断する意識が欠かせないと思う。
マイナンバーカードで“死後”を自動判定 半年で5000人が登録した「SouSou」が選ばれる理由
デジタル資産継承サービス「アカレコ」が指し示す半世紀先を見据えた終活という課題
脳腫瘍から始まったデジタル終活ツール「まもーれe」
「デジタル遺言」の可能性――遺言書を作成できるアプリの開発元に聞く
フリーソフト「死後の世界」が19年以上も現役であり続ける理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.