HPのPalm買収はスマートフォン事業を立て直すチャンス(1/2 ページ)

» 2010年07月05日 17時13分 公開
[Wayne Rash,eWEEK]
eWEEK

 米Hewlett-Packard(HP)は7月1日(現地時間)に米Palmの買収を完了した。これは、非常に重要なプレーヤーがスマートフォン業界に新たに参入したことを意味する。その結果、同分野の状況が変化し、企業ユーザーにも重要な影響が及ぶ可能性がある。

 HPはPalmの買収により、Palmが現在提供している端末「Pre」と「Pixi」の標準エディション(米Sprint向け)およびPlusエディション(米Verizon Wireless向け)を活用できるだけでなく、「webOS」も手に入れる。これらの端末および既存の販売店網はHPの新事業部門にとって重要な収益源となるが、それがこの買収の最大の狙いではない。

 HPは新しいモバイルOSを何としても手に入れたかったのだ。同社は何年も前から、優れたデザインの端末を開発してきたが、そこに搭載されていたのはMicrosoftのWindows MobileというやぼったいOSの各種バージョンだった。そのインタフェースは愛着が感じられず、操作性に欠けるだけでなく、Android端末やカナダのResearch In Motion(RIM)のBlackBerryなど他社のスマートフォンで利用できるようなアプリケーションの供給態勢も整っていなかった。このためHPの「iPAQ」は、同社と既に取引関係にあったためにそれを低価格で購入できる企業や、Exchangeサーバとの連係が可能な製品を必要としていた企業の間でほそぼそと売れていたにすぎなかった。

 Palmを手に入れたHPにとって、次の課題は何だろうか。まず、ある程度の統合期間が必要になる。この期間中に、Palmの従業員は、世界的な規模で事業展開する巨大企業で楽しく働けるかどうかを判断するだろう。Palmの製品がHPの広範な事業分野のどこにフィットするのかを両社が見極めるまでには、試行錯誤も繰り返されるだろう。さらに、HPのハードウェアスキルとPalmのwebOSを利用したプラットフォームを設計するための新たな取り組みに着手する必要もある。

 その間にPalmの技術者たちは、HPの社風が自分に合っているかどうか見極めようとするだろう。一方HPは、できるだけ多くのPalm技術者が残るようにするための手段を模索するだろう。少なくともPalmの技術者にとっては、これは最善の展開だといえるかもしれない。ほかの多くの巨大企業とは異なり、HPは権限が広範囲に分散している。同社の各部門はほとんど独立企業のように運営されており、同一企業の傘下で共存しながらも各部門の間で社風が大きく異なっているケースもある。

 またPalmの技術者たちは、これまで経験したことのない巨大な資金と開発リソースをいきなり利用できるようになる。HPは伝統的にイノベーションが盛んな企業であり、ありとあらゆるデバイスが同社のさまざまな部門で開発されてきた。

 さらにPalmの技術者には、これまで達成するすべがなかった新たな任務が与えられるだろう――企業のニーズに対応できるタブレット型デバイスを開発することだ。このデバイスは、使いやすさではiPadに対抗することができ、本格的な企業向けモバイルOSを搭載し、広範な顧客ベースを獲得するものでなければならない。

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