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» 2012年04月27日 21時33分 公開

“命をつなぐ1分”iPadで短縮――救急現場のモバイル活用、県の全面支援で“使えるシステム”にMCPCアワードグランプリ受賞(2/2 ページ)

[柴田克己,ITmedia]
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予想以上の効果――隊員の入力は「100%」

 Q-iPad用アプリケーションには、主な機能として「病院検索」と「搬送実績の入力・確認・分析」が用意されている。

 病院検索は、救急隊員が患者の症状や搬送を希望する科目をタブレット上で選択することで、条件に合う搬送先を検索できるというもの。また病院の情報と合わせて、その病院で直近に「どのくらいの搬送実績があったか」といったことも参照できる。これによって救急隊員は、病院の診療科目や混み具合を考慮しながら、最適な搬送先を目指すことができるという。

 また搬送実績については、地図との組み合わせで県内での搬送件数や受け入れの可、不可の実績などを一覧表示することもできる。どの医療機関に、どのような案件で、いつ、どれだけの搬送があったかという情報を、ほぼリアルタイム共有でき、あとで分析可能な形で残しておける点が大きなメリットになるという。

Photo 救急隊員は症状や科目などから搬送先の候補となる病院を検索できる(画面=左)。地図情報と組み合わせて各医療機関の搬送実績を一覧することもできる(画面=右)

 タブレット端末の導入による効果は、予想以上のものだった。

 まず、システムの利用率については、Q-iPadの導入以後、大幅に増加した。医療機関、消防機関による利用件数は、それぞれほぼ10倍に伸び、特に救急隊員による搬送実績の入力率は100%を達成したという。古川氏は「現場が本当に欲しかった環境を提供できたことで、実際に使ってもらえた」と話す。

 また、iPad導入以前には、特に搬送が集中していた「救命救急センター」への搬送割合は、32.7%から29.6%へと緩和された。救急隊員が直接、救急車内で適切な医療機関を検索できることにより、搬送先の分散が実現できたという。

Photo iPadを端末として導入することでシステム利用率は大幅に向上した

 システムの利用率が上がり、情報の共有が進んだことが救急医療の質の向上につながっていることを示す1つのデータとして、古川氏は「平均搬送時間」の変化を示した。2010年において「34.3分」だった平均搬送時間は、iPad導入後半年にあたる2011年上半期において「33.3分」へ、約1分間短縮されたという。

 「わずか1分と思われるかもしれない。しかし、救急医療の現場においては、これが『命をつなぐ1分』なのです」(古川氏)

他の自治体へも導入が波及

 この99さがネットでは、iPadとクラウドをベースにすることにより、運用管理コストの大幅な削減も実現している。削減効果は年間約4000万円にも達するという。また、この佐賀県での事例を発端として、全国の自治体で救急車におけるモバイル活用を検討する動きが出ており、今年中に栃木、群馬、岐阜、奈良、香川の5県、その他18の県でも既に検討を進めつつあるとする。佐賀県の事例が全国的な救急医療の質的な向上にむけた波及効果を生み出すことが期待される。

 古川氏は「最初のうちは『データ入力は不完全でもいいから、使える範囲で使ってくれ』と医療機関にお願いしていた。しかし今後は、こうした『実績』をもって協力を要請できる状況にある。それによって入力されるデータの質と量が増えることで、さらにシステムの使い勝手は良くなっていくだろうと思っている」と述べ、今後のさらなるシステム利用の活発化に期待を見せた。

 また今後、佐賀県では救急現場以外の行政機関、議会、教育現場などでも積極的にモバイル端末を導入することで、連絡FAXの廃止による紙コストの削減や、サービス品質の向上などを目指していくという。

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