無料の通話アプリは、通信キャリアの敵か味方かOpen Mobile Summit London 2012(1/2 ページ)

» 2012年06月07日 18時45分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 スマートフォンの普及とモバイル通信の高速化で、モバイルユーザーはさまざまなコミュニケーションサービスを使えるようになった。利用者にとっての利便性は高まっているが、通信キャリアにとっては難しい面もある。これらのコミュニケーションサービスには、Skypeのように音声通話やメッセージという通信キャリアの事業と競合するものもあるからだ。

 通信キャリアのネットワーク上でサービスを展開するOver The Top(OTT)プレーヤー”は、通信キャリアにとって脅威なのか、それともデータ収益を加速させる付加価値サービスとなるのか。また、通信キャリア間の相互接続性を確保するリッチコミュニケーションサービス向けフレームワーク「RCS(Rich Communication Suite)」(GSMAが策定中)が、キャリアの窮地を救うことになるのか――。5月29日から2日間、英ロンドンで開催された「Open Mobile Summit London 2012」で、インターネットベースのサービスと通信キャリアの関係を考えるセッションが開催された。

 ディスカッションに参加したのは、Deutsche Telekom(DT)でコアテレコ担当シニアバイスプレジデントを務めるライナー・ドイチュマン(Rainer Deutschmann)氏、Qualcommシニアバイスプレジデントのアナスタシア・ラウターバッハ(Anastasia Lauterbach)氏、RebtelのCEOを務めるアンドレアス・バーンストローム(Andreas Bernstorm)氏、Orangeバイスプレジデントのダニエル・ゴロラ(Daniel Gurrola)氏の4人。モデレーターを務めたのは、Disruptive Analysis創業者のディーン・バブレー(Dean Bubley)氏だ。

Photo 左からDisruptive Analysisのディーン・バブレー氏、Deutsche Telekom(DT)のライナー・ドイチュマン氏、Qualcommのアナスタシア・ラウターバッハ氏、Rebtelのアンドレアス・バーンストローム氏、Orangeのダニエル・ゴロラ氏

OTTプレーヤーは通信キャリアの敵か、味方か

 これまで、通話、メッセージサービスは通信キャリアの独壇場だったが、スマートフォンの登場で状況が変わり始めている。今やVoIPサービスは、さまざまなプレーヤーが提供しており、チャットやメッセージなどのサービスもFacebookをはじめとするソーシャルネットワークサービス内で提供されている。

 こうした新たなVoIP/メッセージサービスをネットワーク上で提供するOTTプレーヤーと、そのサービスを利用するユーザーは年々増えている。通信キャリアからは影響を懸念する声も挙がっており、欧州では、(通信キャリアに直接の収益をもたらさない)Facebookによるメッセージが、通信キャリアのSMSのトラッフィクに影響を与えている――というレポートもあるという。

 これまでのところ、OTTプレーヤーに対する通信キャリアの対応は受動的だったが、スマートフォンの普及が進むにつれて、より明確な戦略が必要となってきている。DTのドイチュマン氏は「白か黒かで割り切れる問題ではない」とし、OTTプレーヤーを競合としてのみ見るのではなく、協業の面からも見る必要があるという。協業の側面としては、通信キャリアによっては自社内でのイノベーションに限界があり、顧客に魅力的なサービスを提供するために提携が重要になっている背景があると説明する。

 Orangeのゴロラ氏は、OTTプレーヤーを閉め出す考えはないという姿勢を明確にしている。「OTTはイノベーションの方向性を示すものでもある。問題は、そのイノベーションをどうやって提供するか、イノベーションを届けることで、いかにわれわれがユーザーにとって身近な存在になるかだ」(ゴロラ氏)

 しかし、メッセージ系のサービスを提供するOTTは、通信キャリアのコア事業に影響を与えかねない。ゴロラ氏は「Orangeの顧客がコア事業の音声サービスを考えるとき、われわれではなくOTTを連想するようになることがよいことかどうか。ここ2年で真剣に考えなければならない問題になっている」と危惧ものぞかせた。

 通信キャリアのコア事業に影響を与えかねないOTTプレーヤーの1社がRebtelだ。同社はSkypeに次ぐ世界第2位のモバイルVoIPサービス大手。Rebtelのバーンストローム氏は「付加価値を創出するプレーヤーが、通信キャリアからサードパーティの開発者にシフトした」とし、ユーザーが求めるものと通信キャリアのサービスに対する考え方にズレが出始めているとみる。「通信キャリアは1カ所にすべての機能を揃えたいと思っている。だが、アプリストアが登場したことで、ユーザーは自分が好きな単一サービスのアプリケーションを複数集めることを望むようになってきている。これは通信キャリアのやり方とは大きく異なる考え方だ」(バーンストローム氏)

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