通信キャリアからすると、スマートフォンを普及させることには「てっとり早くデータARPU(Average Revenue Per User、顧客収益平均)を上げられる」というメリットがある。
Appleの「iOS」やGoogleの「Android」などスマートフォンOSは、システムやアプリが自動的かつ断続的に通信を行う。極論だが、ユーザーがスマートフォンを一切操作しなくても、電源が入っているだけで通信が行われ、パケット料金が発生するのだ。そのためケータイの時のように「ユーザーがメールやブラウザの利用を控えて、通信料金を節約すること」が難しい。たとえ2段階定額の料金プランに加入していても、日常的にスマートフォンを使っていれば、ほとんどのユーザーが定額プランの上限額に達してしまうのである※。ケータイでは月々のデータ通信料金の支払額が2000〜3000円だったユーザーでも、スマートフォンに移行すると、「利用スタイルをまったく変えなくても」月々の支払いが定額プランの上限額である4410〜5980円に底上げされるのだ。
むろん、スマートフォンユーザーが急増してキャリアの想定以上に通信を使うようになれば、インフラの負担が増すという別の問題が出てくる。だが当面は、ユーザーのスマートフォン移行の促進はキャリアの収益増につながる。またスマートフォン移行に合わせてケータイのラインアップを減らすことで、端末の新規開発および調達コストの削減ができるという副次的なメリットがある。これらの要因から、キャリア各社はスマートフォン移行の後押しに積極的である。
キャリア各社にとって、一般ユーザー層のスマートフォン移行の促進は目下の経営目標になっている。しかし、その一方で、ターゲットとすべきユーザー層は、これまでのスマートフォン市場のそれと大きく変わってきている。ありていに言えば、「スマートフォンを必要とする人や欲しい人は、すでにスマートフォンを持っている」(キャリア関係者)のだ。スマートフォンを自らのニーズに合わせて使いこなせる人たちの手の中には、iPhoneやAndroidのスマホが収まっているのである。
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