1Q減益ながら「自信の揺らぎはまったくない」――KDDIの田中社長

» 2012年07月26日 04時37分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 「計画通りに進ちょくしている。自信の揺らぎはまったくない」――。第1四半期の業績が減収減益だったにもかかわらず、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は、こう言い切った。

 同社の第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比0.4%減の8616億円、営業利益が前年同期比32.8%減の942億で減収減益。数字だけを見ると厳しい状況だったように見えるが、今期の減益分を補うポジティブな要素がたくさんあると田中氏。通期で見れば「減益相当分を吸収できる」と自信を見せた。

Photo 第1四半期の決算概況

減収の要因と巻き返し要因

 田中氏が第2四半期以降で巻き返せると見る要因の1つは、周波数帯再編に向けた端末移行のコストがかからなくなる点だ。KDDIはこの7月に旧800MHz帯を利用したサービスが終了するため、今後は旧800MHz帯対応端末の巻き取り施策にかかっていたコストが縮小する

。2012年度には500億規模のコストがかかっており、この分で1Qの減収相当分(459億)を吸収できるというわけだ。

Photo 営業利益の増減要因。3M先行投資コストは160億の半分がオフロード対策費用だという
Photo 周波数再編に伴う端末移行コストの解消

 さらに1Qの減収要因となったモバイル通信料収入の減少についても、2Q以降にかなり改善していくとみる。

 減少が続いているモバイル通信料収入は、「通信ARPUの対象となる収入の減り具合がなだらかになってきている」(田中氏)。通信ARPUはデータARPUと音声ARPUで構成され、現状では音声ARPUの減少をデータARPUの増加分で補えないことから減少傾向が続いている。

 データ利用が多いスマートフォンユーザーが増えるほど上がっていくデータARPUは好調に推移し、1Qには前年同期比310円増の2720円にまで増加。その上昇率は前年同期比12.9%に達している。auはスマートフォンの浸透率がまだ24%程度と低く、スマートフォンへの移行に伴うデータARPU拡大の余地があるのも好材料だ。

 スマートフォンの販売台数も好調で、1Qは前年同期比2.6倍の167万台を記録。通期目標の755万台に向け、順調なスタートを切っている。

 減少が続く音声ARPUは、下げ止まりが見えてきたという。減少要因の1つであるシンプルコースの影響は、サービスの浸透率が92%にまで達したことから縮小しており、今期末にはほぼ止まる見込み。もう1つの要因である毎月割の設定単価も、前四半期で2000円だったところを1700円におさえ、今期末の底打ちに向けてコントロールしているという。

 音声ARPUが下げ止まり、データARPUが上昇すれば、減少傾向に歯止めがかかる。これに、好調な伸びを見せている固定とモバイルのセット割引施策「auスマートバリュー」による、固定系収入の増加分が加われば、計画通りに進ちょくするという読みだ。

Photo 通信/付加価値ARPUの推移(画面=左)と音声/データARPUの推移(画面=右)

Photo データARPUは今後の増加が期待でき、音声ARPUは底打ちの時期が見えてきたことから、今期末には反転する見込みだ

3M戦略は好調に推移

 KDDIが通期目標の達成を確実視する背景にあるのは、3M戦略の好調な推移だ。3月にサービスを開始したスマートバリューは、この4カ月で133万契約を獲得。スマートフォンの新規契約のうち25%をauスマートバリューで獲得するなど貢献度は高い。固定サービスの純増数は前年同期の約7万8000から17万3000に増え、固定収入は前年同期比29%増の362億円に増加。データのオフロード率も32%まで向上し、年度末目標の50%に向けて好調に推移している。

Photo auスマートバリューがモバイルと固定の純増拡大に貢献している

Photo auスマートパスの契約率は8割近く

 付加価値の創出で売上の拡大を目指すための施策「auスマートパス」は、6月末時点で147万契約を獲得。対応端末の販売数に対する契約率は、目標とする80%まであと少しのところに迫っており、“Android端末を買う人は、ほとんどがauスマートパスに加入する”という図式になりつつあるという。

 自社の強みを生かした3M戦略の成功が、通期目標達成の自信につながっている――。それが今のKDDIだ。

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