米政府がクリーンエネルギーに79億ドル、バイオ燃料や石炭火力、小型原子炉にも法制度・規制

米国のオバマ大統領が新たな地球温暖化対策を発表した。2020年までに温室効果ガスの排出量を2005年比で17%削減する目標の達成に向けて、特にエネルギー分野の対策を強化する。2014年の予算で79億ドルの巨費を投じてクリーンエネルギーの開発・導入を進める計画だ。

» 2013年06月27日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 世界全体の地球温暖化対策とエネルギー政策に大きな影響を与える米国の新しい実行計画が6月25日に発表された。オバマ大統領は地球温暖化の最大の要因になっているCO2(二酸化炭素)の抑制に注力することを強調して、CO2を最も多く排出する電力・エネルギー分野の対策を具体的に提示した(図1)。

図1 米国の温室効果ガス排出比率(2011年)。出典:米ホワイトハウス

 重点を置く対策は3つある。第1は米国が再生可能エネルギーで世界をリードしていくために、2020年までに風力・太陽光・地熱などの発電量を2倍に拡大する。第2はクリーンエネルギーの分野で技術革新を続けるために大規模な投資を実施する。第3の対策は家庭や企業を含めて全米のエネルギー効率を2030年までに2倍に高めることである。

 特に緊急の対策を実施するのはクリーンエネルギーの分野だ。2014年の予算でクリーンエネルギー関連を2013年から30%増やして79億ドル(約8000億円)に拡大する計画を明らかにした。対象はバイオ燃料、小型原子炉、石炭火力(クリーンコール)が中心になる。天然ガスは石炭と比べてCO2排出量が約半分と少ないため、すでにクリーンエネルギーとして発電所への導入を推進中だ。

 米国政府が地球温暖化対策に力を入れる最大の理由は、全米各地で年間の平均気温が上昇を続けていることにある。2012年は数多くの州で過去最高を記録した(図2)。温暖化によって干ばつや山火事、洪水などの異常気象による被害が増加していることを重視する。

図2 2012年の全米各州の気温(アラスカ州とハワイ州を除く)。出典:米ホワイトハウス

 もう1つの理由として、温暖化対策を国内の産業振興のほか、海外に向けた輸出産業に育てる狙いもある。例えば内務省が2009年〜2012年の4年間に実施した再生可能エネルギーによる発電所の建設推進プロジェクトがある。このプロジェクトによって全米で45カ所の太陽光・風力・地熱の大規模な発電所が建設の認可を受けた。合計1000万kWを超える電力の供給が可能になり、1万7000人の雇用を生み出したという。

 クリーンエネルギー関連の輸出拡大も着々と進んでいる。すでに20カ国以上とクリーンエネルギーの導入支援で合意した。特に注力するのは天然ガス、原子力、クリーンコール(石炭)、エネルギー効率改善の4分野である。

 ただし原子力がクリーンエネルギーかどうかは世界各国で意見の分かれるところだ。それでもオバマ政権は「全世界で原子力を安全で確実に利用できるように、2国間あるいは多国間の協力関係を推進していく」と強調している。当然ながら日本も含まれる。

 日本政府にとっては国内の電力安定供給のみならず産業と外交の面でもエネルギー政策の重要性が高まってきた。特に原子力発電所の再稼働は米国との連携を前提に進んでいくことが確実な情勢だ。残念ながら日本政府だけの判断で決められる状況にはない。であれば米国が先行している安全対策の導入を日本のすべての原子力発電所に義務づけるべきだろう。原子力規制委員会の安全基準が米国と比べて不十分なことを日米双方の専門家が指摘している。

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