(続報)なぜ池に浮かべたのか、どうやって実現したのかメガソーラー自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2013年07月25日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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どのような工夫が必要だったのか

 調整池に太陽電池モジュールを浮かべるとなると、突破しなければならない条件が幾つもある。まずは、池の上にモジュールを固定しつつ、池の水面が上下しても位置が変わらないようにしなければならない。「調整池の底が泥質であったため、四方にアンカーを降ろす形で固定可能だった」(荒木氏)。

 完成した「ソーラーオンザウォーター桶川」を上空から撮影した写真を見ると、不思議なことに気が付く(図3)。なぜ池の岸に固定しないのか、なぜ水面いっぱいに敷き詰めないのか。どちらの方法を採っても太陽電池モジュールを固定しやすくなり、発電量も増えるはずだ。

図3 真上から見下ろしたメガソーラー。出典:ウエストホールディングス

 「モジュールの位置決めを調整している際、池の断面が洗面器のような形をしていることが分かった。岸に近い部分では池の底が斜めになっている。もし、岸に付けていたり、周囲に水面を残したりしておかなかったとすると、水位が下がったときにモジュールがせり上がってしまう」(荒木氏)。これでは発電がうまくいかなくなる。設置位置を工夫したことで、桶川市の事例では水位差9mに対応できる。「池の地形とアンカーの張りを考えると、水面の上昇に耐えることはたやすいが、下降はなるべく避けたかった。後谷調整池の場合は自然条件にも助けられた。池の底に湧水があり、一定以上は水位が下がらないからだ」(荒木氏)。同社の技術を他の自治体が導入する際には、池の「地形」が設置条件として重要になる。

 太陽電池は水よりも重い。そのままでは水には浮かばない。さらには電気的な接続部が露出しているため、水に沈めるわけにはいかない。同社は、太陽電池モジュールを載せるために、内部が空洞になった樹脂と架台を一体化させた「フロート」を採用した(図4)。

図4 太陽電池モジュールと「フロート」。出典:ウエストホールディングス

 重心を低くすること、風の影響を弱めることなどの理由で、太陽電池モジュールの設置角度は15度になっている。池の上はホコリが少ないこともあって一般的な30度ではなくても汚れがたまらない。「ただし、7度まで寝かせると汚れが残ることを確認している」(荒木氏)。なお、水面上に設置するため、その条件にあう太陽電池モジュールをフランスの企業から購入している。

建設期間に問題なし

 太陽電池モジュールを4500枚使ったメガソーラーを建設するには、4500枚を池の上に設置しなければならないということだ。地上設置型と比較して工期が異常に延びてしまうのではないだろうか。

 「当社は工期を短縮する改善を重ねている。地上設置型であれば、1MWのシステムを1カ月で設置できる。水上の場合は設置に3カ月(メガソーラーシステム全体では半年)を要したが、これは地上で工期が長い業者と同程度の水準だ」(荒木氏)。

 ただし、冬には設置が難しいという。フロートを1列分並べて接続した後、太陽電池モジュールを水面上でフロートに差し込み、既に完成した部分に引いていって接続するという工法を採るため、船を使った作業が必要になるからだ。

 フロートを連結するという設置方式を採った理由は、風が強い日には自然に波が起こるからだ。「フロートのジョイント部が曲がるようになっているため、個々のフロートが波を吸収する」(荒木氏)。硬い一枚板にするよりも個別に分かれたフロートの方が適するという判断だ。風速40mに耐えるという。

自立運転にも対応

 なお、桶川市の事例では、市の要求項目がもう1つある。非常時には系統から独立して自立運転ができることと、蓄電池機能を持たせることだ。

 通常のメガソーラーは自立運転ができる仕様にはなっていない。ウエストホールディングスは、1MW対応のパワーコンディショナーと100kW対応のパワーコンディショナーを並列に動かすことで解決した。100kW側を自立運転可能なものとした。

 蓄電池については、市の要求が携帯電話機の充電程度であったため、出力2.5kWの可搬型蓄電池を3個寄贈することで対応した。

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