トヨタ自動車は2011年に米国のベンチャー企業である米WiTricityと提携している。WiTricityは米国のMassachusetts Institute of Technology(MIT)が開発した新しいワイヤレス充電技術について、独占的な技術移転を受けた企業だ。「今回実証実験で使うシステムもWiTricityの特許を使用している。WiTricityとは、試作品を基に具体的な技術議論を交わすなどの技術交流を行っている」(トヨタ自動車)。
WiTricityの技術は「磁界共鳴方式」と呼ばれ、最も高効率なワイヤレス充電が可能なことが特徴だ。送信器側と受信器側がそれぞれコイルを内蔵している点は、一般的な「電磁誘導方式」と似ている。重要なのは磁界共鳴方式には2つの明らかな利点があることだ。送信器と受信器の間隔が離れたときに、送電効率が低下しにくいことが1つ。もう1つは送信器と受信器の位置がずれたときにも効率が低下しにくいことだ。いずれも電気自動車に適した性質だ。
「実証実験では送信側のコイルと受信側のコイルの距離は上下に15cm程度離れている(図4)。水平方向のずれは、左右についてはタイヤ1本分弱(1本分は195mm)を許している。前後位置のずれはナビの支援によってほとんど出ない想定で開発している」(トヨタ自動車)。このような条件で送電効率80%を実現しているとした。
ユーザーから見ると、実証実験で使うワイヤレス充電器は、ワイヤレスだという点を除くと普通充電器と「同じ」だ。入力電圧は200Vであり、約90分で充電を完了する。充電器の「出力」は2kWだ。満充電に必要な時間はケーブルを使う200Vの普通充電器と変わらない。
トヨタ自動車は、電磁波の漏洩(ろうえい)と機材の機械的な強度についても実証実験で確認する。今回のワイヤレス充電では周波数85kHzの高周波電力を利用する。出力も強い。人体はもちろん、周囲の電子機器への影響を抑制しなければならない。「高調波漏洩電磁波が抑制されるよう、コイルの設計を工夫し対策を取った」(トヨタ自動車)。機材の機械的な強度では、地面に設置する送信器が課題になる。IPA機能があるとはいえ、送信器の上に乗り上げることもあるだろう。具体的な数値は明らかにしていないものの、一般の車の乗り上げに耐える強度があるという。
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