農業と太陽光発電を共存するLooopの「ソラシェア」、法整備も進み導入の機運高まる

農作物を育てながら、上部に太陽電池を配置して発電するソーラーシェアリング。2014年5月1日に農山漁村再生可能エネルギー法が施行され、導入の下地が整った。太陽光発電システムの「キット」を開発・販売するLooopはソーラーシェアリングに適したキット「ソラシェア」の販売を開始。ソーラーシェアリングの動向と、ソラシェアの特徴を紹介する。

» 2014年05月29日 10時00分 公開
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 農業の再生に太陽光発電が役立つのではないか。営農を続けながら、同じ土地で太陽光発電システムを組み上げる。そして、植物に必要な日照を確保しながら、発電する。

 このような取り組みを「ソーラーシェアリング」と呼ぶ。日照を植物と太陽電池でシェア(共有)するということだ。諸外国ではソーラーシェアリングが広がっており、国内でも有志の「実験」によって、無事、作物の収穫に至ることが分かっている(図1)。国内ではソーラーシェアリングの取り組みがようやく動き始めた。

図1 ソーラーシェアリング坪井第一発電所(出力58kW)で栽培されているカンキツ類

 これまでソーラーシェアリングが普及しなかった理由の1つは、法的なものだ。農地は特別な土地だと位置付けられており、農地法第一条にも「農地を農地以外のものにすることを規制する」という原則が記されている。農地法には農地を他の用途に一時転用する場合、農業委員会の許可が必要ともある。

 2013年3月には農林水産省が通達を発表。「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」と題しており、作物の収量が地域平均の2割以上減少しないことなどを条件に、一時転用を進めやすくした*1)

 ただし、農業委員会の対応には地域によって温度差があり、一時転用はあまり進んでいない*2)。「2013年末までに一時転用が認められた土地は40数件にとどまり、2014年4月末時点でも70件弱だと捉えている」(Looop)。

 このような状況が変わりつつある。2014年5月1日に「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)」が施行、ソーラーシェアリングの機運が一気に高まったからだ。

*1) 一時転用の対象となる土地は、支柱の基礎部分だけである。
*2) 例えば冬の間ブドウは葉を付けていないため、山梨県ではブドウ棚の上方でソーラーシェアリングを進めようとしている。

ソーラーシェアリングに向いた設備とは

 農林水産省が一時転用の形態として認めているのは、支柱を立てて営農を継続するタイプの設備だ。このような設備には大きく分けて2種類ある。1つは1本の軸の上に平らな板を置き、板の上に太陽電池モジュールを並べたタイプだ。もう1つは、「藤棚」のように複数の柱と横木を組み合わせ、横木の一部に太陽電池モジュールを並べたタイプだ。骨組みだけのプレハブのようなイメージである。

 軸が1本のものは、太陽の方向に応じて太陽電池の角度を追尾するシステムなどに多い。藤棚タイプは骨組みの構造を作りやすいという特徴がある。

 地面設置に適した小規模な太陽光発電システムを開発・販売するLooopは、ソーラーシェアリングに適した「MY発電所キット空中型 ソラシェア」の販売を2014年2月に開始した(図2)。既に15件の受注内定があるという*3)

*3) ソラシェアに先立ち、藤棚タイプの骨組みに市松模様のすき間が空くよう太陽電池モジュールを並べた「MY発電所キット 空中型」の販売を2012年12月に開始している。その後、2013年10月からソラシェアのモニター販売を開始していた。

図2 ソラシェアの外観。足にある茶色の平面は地表面を示す

 ソラシェアの特徴は3つある。1つは同社の「MY発電所キット」と同様、製品のハードウェアと工事費用を完全に切り分けたことだ。ハードウェア部分に価格を設定しており、透明性がある。価格は348万円(税別、配送料と工事費別)。

 ソラシェアのキットの中には出力105Wの単結晶シリコン太陽電池モジュールが112枚(合計11.76kW)入っている。この他、4スパンに分かれた角度可変型オリジナル架台と国産のパワーコンディショナー(10kW)、分電盤、ケーブルなどの電材、設置マニュアルも含まれている。

 2番目の特徴は、作物に当たる光量を比較的自由に設定でき、農作業に必要な空間を確保していることだ。

 光量を設定できるよう、回転軸(横木)の上に太陽電池モジュールを4枚載せている。ソラシェアではこの回転軸が28本あり、回転軸に沿って回転させることで、季節や作物の種類に応じて光量を変えやすい。設置時に初期角度を決め、そこから±30度の角度変更が可能だ(図3)。初期角度によって遮光率の範囲は異なる。例えば8〜65%となる。

図3 太陽電池が回転する仕組み。実際には1スパンの太陽電池が連動して回転する(実際の製品と細部の取り付けが異なる場合がある)

 農作業に必要な空間とは何だろうか。作業者がソラシェアの下を歩くことができるだけでなく、農機具・農業機械の利用も可能でなければならない(図4)。ソラシェアの架台の高さは最大3.7mあり、桁下高さも最大3.3mを確保している。支柱の間隔は5.4mだ。

図4 桁下が高いため、農業機械を利用しやすい

 3番目の特徴は、ユニット構成を採ったため、土地の形状に合わせやすいことだ。ソラシェアの架台は標準で4つに分かれている。1つの寸法は5.4m角、4つの設置に必要な面積は約125m2だ。4つの架台を田の字型に配置できる他、一直線に並べることも可能だ。ソラシェアを複数導入した場合も、土地の形状に合わせてさまざまな配置が可能になる。

 なお、ソラシェアを設置するには、長さ2m、直径100mmの金属パイプ(単管)を土地に9本(レイアウトにより異なる)打ち込む必要がある。打ち込む深さは1.5m。単管の上部にはフランジ(円盤状の部分)が付いており、フランジ部分で架台と接合する。

どのような作物が適するのか

 植物には強い日照を好むもの(陽生植物)と、そうではないもの(陰生植物)がある。陽生植物の代表はサトウキビやトウモロコシ、陰生植物の代表はコンニャクやサトイモだ。ただし、それぞれの区別は絶対的なものではなく、連続している。

 作物ごとのある程度の傾向は分かっているものの、ソラシェアと組み合わせた評価も必要だ。そこで、Looopは宮崎大学農学部の霧村雅昭助教のグループと共同してソーラーシェアリングに適した作物や品種の選抜と栽培方法について研究を進めている。

 宮崎大学によれば、コムギよりもダイズが、ダイズよりもイネがより陽生植物の性質が強い。これは、ある一定以上光の強度を高めても光合成の速度が増えなくなる点(光飽和点)に基づいた分類だ。光飽和点以上の光を与えても作物の成長が速くなることはない。なお、一般には花卉(かき)の光飽和点はイネなどの3分の1以下といわれている。

 同大学では、カンショ、ダイコン、ホウレンソウ、レタス、ネギ、ダイズ、イネで実験を進める。


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提供:株式会社Looop
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2014年6月28日

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