製鉄所の火力発電もコンバインドサイクルへ、出力を増やしてCO2は2割減電力供給サービス

鉄鋼大手のJFEスチールは東京湾岸の製鉄所で運転中の火力発電設備を最新鋭のコンバインドサイクル方式へ更新する計画だ。製鉄の工程で発生する副生ガスを利用した発電設備のうち、運転開始から38年を経過した1号機を更新して供給力を10万kW以上も増強する。

» 2014年09月09日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 JFEスチールは神奈川県の川崎市にある「東日本製鉄所 京浜地区」の構内で「JFE扇島火力発電所」を1976年から運転している(図1)。4基の火力発電設備で合計44万kWの供給力がある。このうち最初に稼働した1号機を更新して最先端のガスコンバインドサイクル方式による発電設備を導入する。

図1 「JFE扇島火力発電所」の所在地。出典:神奈川県環境農政局、JFEスチール

 新1号機の発電能力は25万kWを予定していて、現行の1号機の13万kWからほぼ2倍に増加する。火力発電の性能を決める熱効率(燃料の熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる割合)は37%から45%へ引き上げられる見通しで、それに伴ってCO2排出量を約2割削減できるほか、有害物質の硫黄酸化物や窒素酸化物は10分の1以下に削減できる。着工は2年後の2016年10月、運転開始は2019年10月を見込んでいる。

 発電能力が15万kW以上の火力発電設備を新設・更新する場合には、工事に先立って環境影響評価の手続きを完了させることが義務づけられている。JFEスチールは手続きの開始に必要な「計画段階環境配慮書」を9月5日に経済産業大臣と関係自治体の首長に送付して、着工に向けた準備に入った(図2)。

図2 環境影響評価の事前に必要な「計画段階環境配慮書」の手続き。出典:環境省

 この「配慮書」をもとに、環境影響評価の「方法書」「準備書」「評価書」の3段階にわたる手続きを経て、発電設備の工事を開始することができる。通常は手続きの完了までに3年〜3年半かかる。環境省は事業者に火力発電設備の更新を促してCO2排出量を早急に削減するため、従来は必要だった「現況調査」(1年〜1年2カ月)を省略して、合計2年程度で環境影響評価の手続きを完了させる方針だ。

 JFEスチールは火力発電設備の燃料に製鉄所内の高炉などから発生する副生ガスを利用している。副生ガスを燃焼させた熱を使ってボイラーで蒸気を発生して発電する方法である。新1号機ではコンバインドサイクル方式によって燃焼熱でガスタービン発電機を回転させた後に、蒸気タービン発電機で2回目の発電が可能になる。これにより熱効率を37%から45%へ高めることができる。

 発電した電力は製鉄所内の電力として利用するほか、余剰分は電力会社などに売却している。火力発電設備を更新することで製鉄所の環境性能を高めながら、売電収入も増やせる。今後さらに1号機に続いて残る3基の設備も順次更新していく可能性が大きい。

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